詩人は竪琴をテーブルの上に置き、物語が終わったことを告げた。
その、ことりというかすかな音で、人々は夢から醒めた思いで顔を見合わせた。
「これで終わりなの?」
昨夜と同じように、娘が不満げに尋ねた。その眼はまだ霞がかかったようにぼんやりとしている。
「ええ、そうです。これも終わりかたのひとつです」
「わたしは、この終わりかたは嫌」
だだをこねるように、娘はいった。
「べつの終わりかたを教えてちょうだい」
詩人は肩をすくめた。
「それは構いませんが、ああ、もう夜も遅くなりました。このつづきは明晩ということにして、どなたかわたしに一夜の宿をお貸し願えませんでしょうか」
彼はそういってすこし待ったが、ひとりもその願いに応える者はなかった。
そこで、彼は昨夜と同じように立ち上がり、「では、おいとまするといたしましょう」と優雅に一礼すると、いつのまにか布袋に納めた楽器を手に、飄然と出て行った。
あとに残された人々は、しばし流砂のことや夜道を徘徊する魔物どものことを考えていたが、やがて、自らの家路をたどった。