この一冊: 第回6回『影のオンブリア』→amazon | bk1
マキリップの翻訳本が出た! と騒ぐ人は放っておいても買ってくれるだろうから、マキリップって誰? という読者さん、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
日本でファンタジーと名づけられる本は、まず「翻訳もの」と「和製」で読者が分かれている気がする。さらに「児童文学」「幻想文学」「ライトノベル」で分かれる。なかなか、どのジャンルも分け隔てなく読む人は少ない。つまり、和製ライトノベル読者は、翻訳ファンタジーはあまり読まない傾向がある。ような気がする。
でもそれって、もったいないよ、お客さん!
翻訳ファンタジーのなかにも、読み味が和製ライトノベルと似たものは多々ある。ただし、『影のオンブリア』はべつにそうじゃなくて、どっちかというとライトノベルっぽくない方……ああ、逃げないで! 感想文は別途書いたので、ここではとことん売り込みに徹するぞ!(←自分へのかけ声)
よく「カタカナの名前が覚えられなくて」という理由で翻訳小説を敬遠する人がいるようなので、『影のオンブリア』の登場人物を整理してみよう。
- リディア
- ……前オンブリア大公、ロイス・グリーヴの妾妃。元は酒場の娘で、ロイスの死去とともに城を追い出された。赤銅色の髪をした美女。心からロイスを愛していた。ロイスの遺児となった幼いカイエルの身の上を心配している。
- デュコン
- ……ロイス・グリーヴの妹が生んだ私生児。絵を描くのが趣味で、ひとりで街のあらゆる場所を巡り、窓や通路、階段を描く。白い髪をして、宮廷のどの男にも似ていないことから、父親が誰かは謎めいている。
- カイエル
- ……ロイス・グリーヴの嫡男で新オンブリア大公。まだ童子で、リディアとデュコンになついている。
- ドミナ・パール(黒真珠)
- ……ロイス・グリーヴの大伯母で、現摂政。実権を握る老女。その魔力ははかり知れず、彼女に睨まれた者はオンブリアでは生き延びられない。
- マグ
- ……オンブリアの地下に棲む魔女の使い女。もとは自分を蝋人形と信じていた。リディアがドミナ・パールに放逐されたのを偶然目撃し、命を助けた。藁束のような金髪にピンをたくさん差している。物陰に隠れるのが得意。
- フェイ
- ……力ある魔女。長く生き過ぎて自分の姿も覚えていない。地上から訪れる者の依頼に応じて魔法を使い、地上を自分の考えでどうこうしようとは思っていないが、ドミナ・パールのことはあまり好きではない。
- カマス伯爵
- ……デュコンが信頼を置く知的な貴族。「影のオンブリア」の存在を探求し、知識のためならなんでもするタイプ。現在は、新大公カイエルの家庭教師をつとめている。
ここまで読みに来てらっしゃるお客さんの半分くらいは、拙作のどれかをお読みいただいたことがあるんじゃないかと踏んで、敢えていってみる。
ファンタジー作家としてのわたしがいちばん影響を受けたのは、ゲドでもナルニアでも指輪でもなくて、マキリップの『妖女サイベルの呼び声』だと思う。だから、拙作をお気に召したかたにはもう無条件で、マキリップの作品は大丈夫! 面白いから読んで! と力いっぱい推したい。
そのほか、以下のようなかたに是非お読みいただきたい。
- 建物とか都市とか古くて大きくて秘密を隠していそうな雰囲気に惹かれる。
- 古い都市の地下に、自分の年齢や本来の姿かたちも忘れた魔女が棲んでるなんてカッコイイ。
- 大きな声でいうのはちょっと恥ずかしいが、「自分探し」的な作品が好きかもしれない。