東方月白領王。言葉の力で魔物と戦おうとする変革者。ウルバンと王都へ赴く。
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書きづらいキャラクター筆頭。思考法がとか行動がではなく、言葉遣いが難しくて。端的に、丁寧に、厭味に、慇懃無礼に、……とバランスをとるのが大変で、この人ほど台詞を書き直したキャラクターはいない。とくに上巻では、書いては直し書いては直しの苦行を強いられた。
ちなみにこの人も、エスタシアと同様『赤竜』のときには存在も知らなかったキャラクター。ソグヤム抜きで、いったいどんな話になったんだろう……あのままスニーカー文庫で出ていたら。皆目見当がつかない。
まあとにかく、小説を書いていてはじめて、このキャラクターは人気が出るんじゃないかなぁ……と事前に予測がついたのは、嬉しかったかな。……何年プロやってんだと言われそうだが、あまりそういうことを考えられない駄目なプロなので、そのへんはご了承を賜われればと。
この人とセットで、クルヤーグも敬語を使ったり呼び捨てにしたり叱り飛ばしたりと、上下関係がめまぐるしく変転するキャラクターで、大変だった。そのへんは、『約束』で再体験させられた。ソグヤム個人の生い立ちについては、長編よりこの短編『約束』の方がよくわかると思う。
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自分が正しいと主張するために、つい、
いらぬことまで口にするのが、わたしの悪い癖だ。
ソグヤムの従兄弟で、〈王の剣士〉。暴走しがちな従兄弟を抑えつつ、補佐をつとめる。
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なんとなく、ソグヤムとセットで生まれたキャラクター。主君に向かって馬鹿を連呼する姿が、なぜか好感を呼んだ模様。
この人も常識人で、もしソグヤムと親しくなっていなければ、ごく真っ当に平穏な……人生を送れたかどうかは、微妙かも。ソグヤムがエキセントリックなので作中では目立たないものの、彼自身も好き嫌いはっきり、白黒きっぱり、妥協のない人格のように見えるので。それなりに我慢も効くだろうけど、どうかなあ。
短編『約束』では、視点キャラクター。細君も、回想シーンでほんのり登場。
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従兄弟として、友人としての気もちがないとは言わん。
だが、それ以前にあなたは領王だ。それも、仕えるに値する。
砦の戦士長。エスタシアの昔なじみで、再会後は庇護者となって同行する。
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シェラザは、例の「出版は無理そうだけど思い浮かんでしまったので書きつけておいた」冒頭に、すでに登場していた。なんとなく、女ばかりの砦にも戦士役はいるのだろうなと……その程度の考えで書いておいただけなのだと思う。
が、動かしているうちに、これはただの人間じゃないよなぁという感じになってきて、結果、あんなことに。
砦の暮らしを描写する余地はあまりなかったが、シェラザは砦の中でも長に次ぐ特殊な立ち位置で、えー、なにしろふつうの「人」ではないので。寿命も長いし、大けがしても死なないし。ただ、狭い世界しか知らない砦の住人たちには「そういう人だ」と認識されていたのだろうと思う。シェラザはシェラザ、強くて死なない、ちょっと怖いけど、彼女の不在は考えられない……みたいな感じ?
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わたしはこの運命が気に入っている。
お前の力になれることが嬉しい。
現王の息子で、王太子。剣士としての実力もあり聡明だが、権力欲が強い。
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もっと登場する予定だったのに! という不遇なキャラクター。当初、書き手の頭の中では、ジェンが王都で画策するシーンがもう少し多くて、必然的に、彼がはたらきかけるべき相手としての王と王太子……この親子には、もっと出番があるはずだった。
ただ、なにをどうしても導入部がうまく書けなくて、いろいろ試しているうちに舞台が王都から離れていってしまい、ソグヤム様ご出馬(導入部書き直しの最中に、彼は、ぽんっ! と出てきたのだ……)に至っては、世界の東端から話を始めないわけにはいかなくなり……で、ジェン、王、王太子という王都組の出番が削れてしまったと。すべてソグヤムのせいだ……。
こんな時代に生まれあわせなかったとしても、この人は密告者を抱えて恐怖政治方面に走っていきそうなタイプだし、結局ソグヤムとは対立することになりそうだ。つくづく相性の悪い兄弟だと思う。
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竜使よ、お前はわたしには勝てぬ。
お前は甘い——世界を滅ぼさずに済むと夢想するほどに。
〈王の剣士〉の剣士長。元は漆黒領に仕えていたが、領王の命でエスタシアと脱出した。
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このキャラクターを登場させたとき、設定をどこまで考えていたか……すでに覚えていないのだけど、たぶん、例によって単純に「姫を守れと命じられたから脱出したけど、ほんとは戦いたかったから恨んでる」程度の認識だったのではないかと思う。
彼の言動を見ているうちに、これはただ自分の望む死に場所を得られなかったからというのではなく、なにかあるのでは……と考えはじめて、つくっていったと。「書いていくうちに、なにかあるのではないかと思った。なので、なにかあることにした。つまり、前に戻って矛盾点を追求。あと伏線用意。書き直し、書き直し」という能率の悪い作業の連続が、わたしにとって「小説を書く」ということであるらしい。
そんなこんなで救われない存在にされてしまったゾータンだが、彼の問題は、本人が救われたがっていなかったところにあるのだろう。仕えていたあるじを守りたかった、死にたかったという方向に思考が傾斜していたから、自分の意志を殺してしまい、ますます呪縛にとらわれていったというか……。べつに救いたくないわけではなかったのだが、安易に救うとそれはもう「ゾータンではない」と感じられて手の出しようがなかった。結局、最後まで呪縛にとらわれたままになってしまった。
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死ぬな。
生きて、帰るのだ。故郷へ。