だから、わたしはわたしひとりだけの絶望で、
諦めるわけにはいかない。
イーファルによって言葉と心を封じられた、北方漆黒領の姫。世界再生の鍵を握る……?
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スニーカー文庫の初代担当編集者と『異次元創世記』(当時は仮題『赤竜顕現』だったかな……)の原稿をやりとりしているとき、女の子キャラが欲しいですねといわれ、それでは一作ずつゲスト・キャラクターとしてかわいい女の子を出して三部作で、と。二作目以降の出版の見込みがなくなったときに、浮かんできた二作目の冒頭シーンを書きつけておいたものが、後に『真世の王』の導入部となった、エスタシアとイーファルの邂逅シーン。
つまり、赤竜の話を書いていたときには、まだエスタシアはこの世界に存在していなかったわけで。ラスト近くでウルバンがジェンを刺すことと、ジェンがイーファルと世界の外側を選ぶということ以外、先の展開はほとんど考えていなかった。
その後、何年か脳内醸成が進んだ結果、単なるゲストキャラで北方のお姫様という位置づけだったエスタシアは、主人公のひとりにまで格上げされ、次々と著者仰天の展開をみちびきだす変なキャラのひとりに。
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どうか、おれに機会をください。
助かりたいと思ってください。
東方出身の元羊飼い。竜使の幼馴染みで、素朴な人柄。縁あって領王を助け、王都へ向かう。
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あまり「こういうキャラクターにしよう」といったことは考えず、ごく自然に出てきた少年、後に青年。
地に足のついたタイプで、作中ではクルヤーグに並ぶ常識人。だからこそ、ともすれば非現実の世界へ旅立ってしまいそうなジェンやエスタシアと一緒にいても、なんとなくバランスがとれるのだと思う。
常識人は常識人でも、異質なものを排斥するのではなく、それを受け入れて見守ってくれるタイプ。現実には、なかなか難しいことなのだろうけど……こういう友人は、得難いものかもしれない。
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でも、ぼくは人として語りたい。
実際に生きた者としての物語を、語り直したいのです。
東方出身の竜使。〈銀の声持つ人〉に言葉を学び、世界の滅びを押しとどめようとする。
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もとはといえば「ファンタジーって、なんで王子様とかお姫様とかばっかりが主人公で、普通の人の話じゃないわけ?」と人にいわれ、わかったわよじゃあ王子様でもお姫様でもない人を主人公にするわよ文句あるか! と。そのころ、ちょうどスニーカー文庫から話が来たので、男の子が主人公で成長物で……と考え出されたのが、ジェンだった。
出発点はそのように意図的なものだったが、より「ふつうの人」なのは彼の親友のウルバンの方で、ジェンは「竜使の孫」として生まれも育ちも特殊だし、ちょっと条件を外してしまったかなぁ、とあとで思った。
はじめに『赤竜』を書いたときは紛れもない主人公だったのに、『真世の王』では一歩退いた感じになってしまって、ちょっと不憫かな。わたしにとっては書きやすいキャラクターで、最後の最後まで楽しく——と、こういう展開の物語に対してコメントしていいのかわからないが——書けた。
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わたしは本来、ここに在るべきではない存在。
だから竜はわたしを呼ぶ、干渉する者と。
エスタシアやジェンと深く関わる〈銀の声持つ人(ラハナンァル)〉、最後のひとり。
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書きやすいキャラクター筆頭、しかし同時になにをしでかすかわからないキャラクター筆頭でもある、人外の存在。
思ったより登場シーンが少なくて、上巻を書いているときは、おっかしいな〜、なんでイーファルまだ出てこないんだろうな〜、早く楽をしたいのにな〜、……というようなことを思っていた記憶がある。
結局、上巻の第四章まで待たされて、出てきたときにはほっとした。たぶん書いている最中のわたしはジェンにいちばん近いので、導師であるイーファルが出てきてくれないと不安だったのだろう……と思うことにした。
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だが、滅びるために生まれたのではない。
滅びは、なにをしなくとも辿り着く先だ。目標じゃない。
かつての〈王の剣士〉。ジェンに命を助けられ、北の砦で再会する。剣の達人。
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得体の知れない胡散臭い大人、というのを昔から書いてみたくて、彼がそういうキャラクターの(わたしの中では)嚆矢、ではないかと思う。
もっとも、登場当初の『赤竜』では盗人扱いだったからともかく、ジェンのおかげで命を救われ、その後長く行動をともにしていたという設定で『真世の王』に再登場したときには、胡散臭さは半減してしまったかも。むしろ、頼れる大人という感じ?
考えてみれば、『赤竜』『黒竜』『白竜』はもとより、外伝の『燎原の炎』と『約束』……すべてに登場しているのは、この人だけ。もっというと、ラスト近くで確実に「死んでいない」数少ないキャラクターのひとりでもあるわけで。しぶといなぁ。
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