人には理解できない万能力を行使する存在。それに精霊と呼び名を与え、契約し、ちゃっかりかれらの力を利用する人々が生活する、ネットワーク都市ライブラ。その最下層で「代行屋」をいとなむサキとカイは、三人目のメンバーで家族同様の走り屋・ジュラのチームメイトと出会う。ジュラがやばいことに巻きこまれてるかも、というウィルの案内で出かけたふたりが警察に封鎖された「現場」で目撃したのは、ジュラの愛車と、生々しい死体だった。
顔なじみのルーク刑事に詰め寄ると、すでに事件は市警の管轄ではないという。公安局――それも、前知事リヒト・オルベの遺産がらみを扱う、特別遺産対策課の担当。それは、サキの幼なじみ、ユノーが配属されている部署だった。公安はかれらに取り引きを持ちかけた。
代行屋オフィス・サイズとして、事件の犯人を捕まえる。 サキとカイが知りたいのはジュラの行方だけだ。しかし、事件にまつわる手がかりは、公安局が握っている。利害の一致。サキとカイ、そして姿を消したジュラのせめてもの代役として走り屋を引き受けたウィルは、ジュラを探すために動きはじめた。
シリーズ(*1)第三作。
うーん。ぽんぽん読めてしまうし、嫌いじゃないのに、なんかものたりないなぁ、と思ったら薄いのだ! 本文だいたい200ページ、イラストや目次などもさっ引くと190ページを割りこむような。
もっと読ませろー。
話は単発で読むべき内容ではなく、すでにシリーズ読者向けであるといえよう。「リヒト・オルベの遺産」や「公安局」といったものの位置づけがわかっていないと、話の流れをつかみづらい、というのは大前提として。登場人物もシリーズを通して皆勤賞のルークのほか、サキの幼なじみとかその上司とか、カリスマ教祖とか花屋とか(笑)、予備知識があった方が楽しいに違いない。たとえば以下のやりとり。
代車。ルミナス・フラックス。別れ話。
サキはこの少年が誰か、わかったような気がした。
「……あー、つかぬことを聞くけど、あんたのご職業は」
「え、花屋でバイトしてますけど」(p.33)
前作感想で引用した部分と繋がるので、忘れちゃったという向きはご覧あれ。
そうしたこまかい遊びはともかく、物語全体の流れも「シリーズ」の中での設定説明というか、種明かし的な部分に重点が置かれている。それですべての疑問が氷解したかというと、あらたに謎が生まれただけなわけだが、まぁ、いずれ説明してもらえるんだろう。と思う。
そんなわけで、単品として読んだ場合の評価はイマイチ。シリーズ全体としてみてはじめて、「えっ、そうだったの、じゃあこれからどうなるの?」的位置づけの作品として、楽しめるのではないか。そんな気がする。
にしても、今回の犯人役は不遇すぎて、哀しい。種明かしは毎回、なんともいえず「やるせない」のだが、今回は書き込み不足な気がする。薄いから感じるだけなのかもしれないが、彼の過去の記憶とか、もうちょっと書いてくれてあるとよかったのになぁ。
読了:2004.03.11 | 公開:2004.04.06 | 修正:--