魔女の結婚シリーズ三冊め。これも番号なしで紛らわしい。シリーズ第一巻は、サブタイトルなしの『魔女の結婚』(
*1)。
古代から中世ヨーロッパへ、長い眠りから目覚めたケルトの巫女姫・エレイン。彼女の人生の目標は、運命の人との出会い、そして結婚なのだ! しかし、彼女を目覚めさせてくれた黒魔術師マティアスは冷淡きわまりなく、到底「運命の人」とは思えない。
いろいろとやむを得ぬ事情があり、エレインとマティアスは師弟となって行動を共にしているのだが、今日もエレインは運命の人探しに余念がない。そんな彼女が一見して盗賊とわかる荒くれ者に襲われそうになったとき、かれらを制止したのは、その頭目らしい若者だった。
「ずっと、あんたみたいな女が現れるのを待っていた」
エレイン、いちころ! さっそく今回の運命の人はウォルターに決定だ! そのウォルターは、とても大切なものを探すために魔女が必要なのだと言い、廃墟となった修道院跡にエレインを導くが――。
エレイン自身に秘められた膨大な魔力と彼女の眠り、さだめられた運命の謎を明かすのが前巻の『魔女の結婚 運命は祝祭とともに』(
*2)なら、今回はマティアスの生い立ちに迫る一本。
口が悪くて冷たくて頭がよくて頼りになるのに取りつく島がないマティアスは、まったくもってわたしのツボ・キャラで、早くエレインとうまくいけー! と念じるのと同時に、あんまり早くてもツマラナイから、もっと四の五のしてろー! とも思ってしまう。
そういう視点からの感想ではあるが、今回は非常にそつなくまとまっていると思う。
ただ残念なのは今回の「運命の人」は、ちーっともエレインに対して本気ではないあたりか。やっぱり本気の相手、あるいは本気で騙しきろうとしている相手とマティアスが張り合ってこそ、ラヴラヴ・ファイヤー! と読者も盛り上がることができるわけなので、そこがちょっと惜しいかなあ……。
しかし主要キャラ一覧を見るたびに思うのだが、わたしのイメージだと
ミシェル=フランス系発音(たとえば英語系だとマイケルになるよーな)
ステファン=ドイツ系発音(同じく英語系に直すとスティーヴンになるよーな)
ウォルター=英語系発音のよーな……。
……って、調べて書いているわけではないので間違っているかも。あとで調べよう。資料本が今、山のなかに埋もれてて発掘できないのだ。ていうか、ここ、片づけないとな……。
いやまあヨーロッパを股にかけるロード・ノベルなのだと考えれば、これでいいのかもしれないが、いったいかれらは何語で語り合っているのだろうか。というようなことを考えるべき話ではないのだろうし、読んでいるあいだは完全に保留をかけて物語自体を楽しめるからよいのだが、感想を書こうとしてぺらぺらめくると、やはり気になるなあ。
すみません、コマカイ読者で……。たぶん、対象読者層は気にしないだろうから、これはこれで間違ってないとは思うのだ。
ついでに書いておくと、これは非常に些細な疑問なのだが、ごく一般的な日本人は、(ほぼ)同じ綴りで言語によって発音が違うだけの名前がヨーロッパにはどこすかあるのだということを、意識しないというよりむしろ知らぬのでしょうか?
今回のわたし的にツボ入った会話。
「う……運命かもしれないじゃないか。だってわたしは魔女で、ウォルターは魔女を捜してたんだぞ」
「じゃあ何だ、あんたが粉屋だったら、パン屋はみんな運命の人か」
いいぞ、マティアス! というわけで、つづきを楽しみに。
- *1『魔女の結婚』
- シリーズ第一作。エレインの目覚めとマティアスとのある意味劇的、エレイン的には非常にがっかりな運命の出会い。
→感想
- *2『魔女の結婚 運命は祝祭とともに』
- 結婚願望にこりかたまった巫女姫エレイン、今度こそ運命の人に出会えるのか?
→感想
読了:2001.12.11 | 公開:2001.12.13 | 修正:2002.01.06