what i read: 魔女の結婚 
運命は祝祭とともに


*Cover* 書名魔女の結婚 運命は祝祭とともに
著者谷瑞恵 Mizue Tani
発行所集英社(集英社コバルト文庫)
発行日2001.09.10
ISBN4086000113

『魔女の結婚』(*1)の続編。千五百年の眠りを経て古代から蘇ったケルトの巫女姫、神秘的な存在かと思いきや、実は「運命の恋人」との結婚願望に凝り固まったナイスお嬢さん。しかし彼女を目覚めさせてくれたのは、「運命の恋人」像からはほど遠い、超冷血魔法使いであったのである。まる。
 という話なのだが、あのぅ、この背表紙といい表1といい、「魔女の結婚」って字がバーンと入っているから、今後は書棚に並べると「魔女の結婚」!! で小さくサブタイトルがつづくって感じになるの? ぱっと見たときにぜんぶ「魔女の結婚」で、わかりづらいような気がするのだが。まあ、よくよく見ればよいだけのことか。
 後年の自分への覚え書きとして控えておくと、この「運命は祝祭とともに」がシリーズ第二巻。
 マティアスの弟子になったエレイン(魔女見習い)は、文字の読み書きの練習もそこそこに抜けだして、ベルティンの祭(キリスト教徒にとっては「キリスト昇天祭」)を控えてにぎわう街に出る。そこでなんと、自分こそエレインの運命の恋人だと名告る青年に出会ってしまった。なかなかの美青年だし笑顔は甘いし言葉も仕草もやさしいし、邪魔さえ入らなければエレインは彼のもとへ即座に行っていたかもしれない。
 邪魔に入ったのはほかでもない、抜け出した弟子を探しにきた冷血魔法使いのマティアスである。売り言葉に買い言葉のふたりは例によって大げんかをし、結局、エレインは知り合ったばかりの「運命の恋人」のもとへ行くことになる。
 ――どうしてマティアスは引き止めてくれないのだろう。
 やはり自分は彼にとって邪魔なだけの不出来な弟子で、いない方がよいのだろうか……。
 このあと、前作でエレインの天然無邪気系魅力にコロッとやられた貴族のおぼっちゃまと成り上がり剣士(……我ながらすごいカテゴライズ。すみません、身も蓋もない書きかたで)、そして多少は魔法を扱う吟遊詩人のアートまで登場して、さながらオールスター・キャストの様相を呈してくるわけだが、毎回こうなるのだろうか。

 相変わらず、口も性格も悪い自己中心的魔法使いマティアスと、思いこんだら猪突猛進、天然溌剌お子様魔女の組み合わせが楽しい。
 マティアスに、腹を立てながらも惹かれている自分に気がつかないエレインの鈍感っぷりがすばらしい。鈍感なんだけど、ときに切なくなって、そして鈍感ゆえに切なさの理由がわからないあたりもスバラシイ。マティアスも恋愛感情への鈍感っぷりではエレインとタメをはっているところがまたステキである。敢えて書くまでもないと思うが、マティアスはわたし的ダーリンのツボをかなり揃えたキャラクターなので、読んでいてたいへん楽しい。
 いいなあ。こう、この「切ないわ〜」って感じがたまらんでござる。ビバ少女小説。

 今まで同じ著者の作品を三冊読んでみたわけだが、どれにも共通して感じるのは、登場人物の心の動きを描くのはうまいし、会話のテンポもよいのだが、背景の説明とか、物語の大きな枠組みや仕掛けといったあたりが、どうしても見えづらくなってしまっているようだ、ということか。
 いろいろ考えられているのだとは思うのだが、その見せかたがあくまで控えめであるということなのだ。登場人物たちのほんとうに背景という感じで、目立たないのである。世界観オタクとしては、これは哀しい。
 しかし、このシリーズは、このバランスでいいのだとも思う。コバルトという少女小説の老舗レーベルに、このように心あたたまるファンタジーが存在するというのは、とってもすてきなことだ。
 つづきが出るといいなあ。

*1魔女の結婚
 ケルトの巫女姫エレイン、村の滅びと運命を共にしたはずが、その眠りは永遠のものではなく、千年以上を経た中世に目覚めさせられてしまった! 目覚めさせてくれたのは運命の人……にしてはやけに冷たい。シリーズ第一弾→感想

読了:2001.09.02 | 公開:2001.09.03 | 修正:2001.12.18


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