what i read: 魔女の結婚


*Cover* 書名魔女の結婚
著者谷瑞恵 Mizue Tani
発行所集英社(集英社コバルト文庫)
発行日2001.04.10
ISBN4086148439

< ケルト系ということで、ネタがかぶっていないかチェックしようと購入。かぶっていても、今さらどうにもならないのだが、気になるし。
 村が滅びを迎えるとき、巫女姫エレインは村人に『歓びの野』(マーグ・メルド)への道をひらくべく、毒をあおって死を選んだ。幸せになるのだ、次に目覚めたらきっと結婚する(それがエレインの願望だった)のだと念じながら。
 しかし、彼女がふたたび気がついたとき――そこは『歓びの野』などではなかった。
 エレインを目覚めさせたのは、運命の人のやさしいキスなどではなく、ほっぺたをつねる容赦ない指だった。その指の持ち主は冷淡なドルイドで、状況もわからぬまま、エレインは彼の後を追う。そして知った。彼女が眠りについてから、千五百年ほどもの時間が流れてしまっているのだということ。同朋らはすでに存在しないこと。
 死んだはずのエレインが時を越えて目覚めたのはいったいなんのためか。もちろん、運命の人と出会い、今度こそ幸せに結婚するために違いない! エレインは「運命の人」探しに気合いを入れるが――。
 で、彼女を目覚めさせてくれたドルイド(の修行をしたこともある魔術師)に無理やりひっついて歩くことになるわけなのだが。
 ヒロインのキャラが溌剌としていて、いい感じ。言葉遣いがぶっきらぼうで、たおやかな女言葉でないのも好感度高し。高飛車なのもステキ。
 そして魔術師マティアスがとことん冷淡なのには、個人的ツボを押されてどきどき。
「そうか、わかったぞ。おまえは、わたしの保護者になるべき運命なんだ!」
 エレインは、ぱっと立ち上がった。
「はあ?」
「ちょっと性格に難がありそうだが、許す。わたしは寛大な巫女だからな」
「誰が保護者だ。いいかげんにしろ」
――『魔女の結婚』p.27より
 こういうテンポにグッとくる人は、とりあえず読むべし。
 エレインに限らず、キャラクターがみんな自由闊達に動いていて、言葉のやりとりが心地よい。
 ちなみに、冷淡魔術師のほか、深層のご令息、吟遊詩人、果ては成り上がり系生意気少年剣士まで、よりどりみどりの逆ハーレムでござる。きっとどこかにあなたのツボが(って殿方には関係ないか……)。

 ちょっとひっかかるのは、エレインが「時代」「国」「文化」などの概念をどれくらい持っているのか、そんなすんなり中世になじめていいのか? そして、この二人組、あっというまに異端扱いされて宗教裁判→刑死してしまうんでは? というあたりかなあ。
 しかし、こういうのも、ふつうの読者は気にならないに違いない。むしろ、コツコツと説明しても鬱陶しいだけなのではないかと思われる。最近なんとなく悟ってきたぞ。
 そういうわけで、わたし個人としては「もうちょっと説明してくれると嬉しいのに」くらいが、ライトノベル的にはちょうどいいバランスに違いなく、本書もまた、かなりいい感じでバランスがとれているように思われる。

 爽やかな読後感。たいへん気もちよく読めた。


読了:2001.07.05 | 公開:2001.07.19 | 修正:2001.12.18


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