村が滅びを迎えるとき、巫女姫エレインは村人に『歓びの野』(マーグ・メルド)への道をひらくべく、毒をあおって死を選んだ。幸せになるのだ、次に目覚めたらきっと結婚する(それがエレインの願望だった)のだと念じながら。で、彼女を目覚めさせてくれたドルイド(の修行をしたこともある魔術師)に無理やりひっついて歩くことになるわけなのだが。
しかし、彼女がふたたび気がついたとき――そこは『歓びの野』などではなかった。
エレインを目覚めさせたのは、運命の人のやさしいキスなどではなく、ほっぺたをつねる容赦ない指だった。その指の持ち主は冷淡なドルイドで、状況もわからぬまま、エレインは彼の後を追う。そして知った。彼女が眠りについてから、千五百年ほどもの時間が流れてしまっているのだということ。同朋らはすでに存在しないこと。
死んだはずのエレインが時を越えて目覚めたのはいったいなんのためか。もちろん、運命の人と出会い、今度こそ幸せに結婚するために違いない! エレインは「運命の人」探しに気合いを入れるが――。
「そうか、わかったぞ。おまえは、わたしの保護者になるべき運命なんだ!」こういうテンポにグッとくる人は、とりあえず読むべし。
エレインは、ぱっと立ち上がった。
「はあ?」
「ちょっと性格に難がありそうだが、許す。わたしは寛大な巫女だからな」
「誰が保護者だ。いいかげんにしろ」
――『魔女の結婚』p.27より
読了:2001.07.05 | 公開:2001.07.19 | 修正:2001.12.18