あーもー12月のコバルトの新刊が手に入らない! 三冊も読みたい本があるわとウキウキしていたのに、蓋をあけてみたら、近所の書店で入手できたのは一冊……。とほほ。
というわけで、好調ハイ・テンポ・コメディ第三弾。第一弾(
*1)、第二弾(
*2)とも番号なしで紛らわしいので、タイトルは下でご確認いただきたい。
ちょっとした勘違いと猪突猛進から、憧れの高校生・柾季の使い魔になってしまった中学生・一子。あの人はステキな高校生でした、一子はフツーのドジな中学生でした、ごくふつうのふたりは一子が一方的に柾季に出会い、一方的に恋をしたという関係でした。でも、ちょっとふつうではないことに、柾季は社会奉仕をおのれの使命と心得る魔女だったのデス!
しかし社会奉仕が行き過ぎたせいか、夏休みも補習に明け暮れることになった柾季。その最中、騒がしい物音が廊下から聞こえてきた。日本刀を持った男子生徒を、女子が必死に引きとめようとしている。その男子の方が口走った名前を聞いて、柾季はダッシュで教室を飛び出した。
観凪一子。
殺人未遂。
たしかに聞こえた。間違いではない。
しかし、いったい彼の使い魔たる一子と殺人未遂事件になんの関係が?
柾季の学校に連綿と伝わるOB会の伝統と宝探しと天使系美少女と学校専門空き巣と部活動の物語。
なんだかもう、このシリーズは、ひたすら文章のテンポを楽しみたくて読んでいるような気もする。あと、高校生魔女である柾季の言動。一子の猪突猛進っぷり。好きだなあ、このふたり。
学生さんメインになったぶんだけ、前作より話に説得力があるかもしれないという気がする。やっぱり、大人の事情とか社会の仕組みとかそういうものに、この高校生魔女と中学生コンビがあたるのは、かなりキツいように感じるのだ。リアリティがちょっと減じてしまうというか。いや、そんな単純なもんじゃないよと読みながら思ってしまうし、では単純化することが間違いかというと、コバルトというレーベル、この小説の持ち味から考えれば、単純化自体は方法として誤っていないだろうとも思う。
つまり、題材の選びかたなのだ。
日常に密着したボランティア魔女のリアリティをそこなわない事件やエピソードの積み重ねであってほしいと思う。大企業の倫理がどうこういう話と、茶目っけたっぷりすぎるOB会のたくらみがどうこういう話では、やはり後者の方が作品世界と親和性があるぶん、リアリティがそこなわれないのではないだろうか。
あれこれ書いてみたが、言葉にすると、思っていることとちょっと違うような気がするなあ。うーん。難しい。
ともあれ、物語自体は難しいことなど考えず、奇行奇癖の登場人物たちの言動におどろかされ、笑わされ、ちょっとしんみりしたりして、楽しくおかしく前向きに読むのが正解であろうと思う。続編が出たらまた買う予定。
かなり好きなシリーズなので、今後の展開に期待。今回なんだか大きく伏線はってるような気もするし。柾季になされた予言ってなんなんだろう、気になるなあ。
- *1『東方ウィッチクラフト ―垣根の上の人―』
- シリーズの第一巻。柾季と一子、衝撃の出会いと因縁発生の巻。『―願え箒の星に―』を読む前に、できればこの『―垣根の上の人―』はおさえておきたい。
→感想
- *2『東方ウィッチクラフト ―螺旋舞踏―』
- シリーズの第二巻。柾季 VS 母。母は強し! この母にしてこの子あり!
→感想
読了:2001.12.05 | 公開:2001.12.07 | 修正:2002.01.06