孫策伝

星を見上げつづけると心を食われると、聞いたことがある
……気がふれてしまうのだと。
updated: 2007/07/09

「その三羽の鳥は、皆、死ぬのだ。天下を獲らぬ間にな!」

 袁術は、またしても約束を破った。九江郡をやろうという言をひるがえしたのにつづいて、廬江郡もまた、孫策に落とさせておいて自分の子飼いの部下に与えたのだ。怒りをおさえきれず、部下たちのもとを立ち去った孫策の前にあらわれたのは、謎めいた青年だった。

孫策(そんさく)
 字は伯符。袁術の部将として兵を挙げ、江東にその勢力を伸長させた。炎烈鎧の遣い手として、無敵の強さを誇る。
 史実では……孫堅の死後、移ってしまった一族の主導権を自身に取り戻し、兵を率いて江東を席巻した。その死には謎が多く、仇討ち、暗殺、仙人の祟りと諸説ある。享年二十六歳。
于吉(うきつ)
 謎の仙人。孫策に玉璽の実在を教え、その奪取をほのめかした人物。
 史実では……記録の上では、おそらく百歳をこえるだろうという人物で、太平道の元になるといわれる『太平清領書』を得たと伝えられる。史書によっては「干吉(かんきつ)」とも記録されている。呉郡から会稽のあたりを往来して民の信仰を集めたという。一説によれば、孫策の死は于吉仙人によってもたらされた。
梁父吟(りょうほぎん)
 諸葛亮(孔明)がよく口ずさんでいたといわれる歌。内容は古代の宰相、晏子にちなんだもの。藝文類聚などに見える。