陸遜伝

みんな夢だ、とたまに思う。夢に違いない。
だって、自分は父母の死に顔も覚えていない。
updated: 2007/07/09

「今、ここにいる自分自身を、どうにも信じきれない」

 父母を失い、抜け殻のようになった陸遜。彼を引き取ってくれたのは、従祖にあたる廬江太守の陸康だった。陸康の次男である陸績と言葉をかわす内に、少しずつ平静を取り戻していったかに見えた陸遜だったが——。

陸遜(りくそん)
 字は伯言。玉璽を守る陸家の跡継ぎだが、今は流浪の生活を送っている。両親が殺された当初は、親戚である陸康のもとに引き取られたのだが……。
 史実では……呂蒙亡きあとの孫呉を支えた将軍。後に丞相となるが、晩年は孫権の後継問題に巻きこまれ、流罪となって憤死。享年六十三歳。
陸績(りくせき)
 字は公紀。廬江太守陸康の次子で、神童の誉れも高い。闊達な性格で、内にこもっている陸遜とも怖じずに言葉をかわす。
 史実では……若くして呉に仕えた英才。博識をもって知られていたが、自分が正しいと思うところを誰はばからず主張したため、けむたがられて遠方に送られ、不遇の生涯を閉じた。享年三十三歳。
炎烈鎧(えんれつがい)
 古代より伝わる武具。勇者が使えば秘められた力を発揮し、さらにその遣い手が玉璽に選ばれれば、無敵ともいえる力を与える。陸家に伝わっているのは『紅閃』。