『チェンジリング』完結記念・ケルトフェア
|
拙著の刊行にあわせ、手に入りやすそうなものを中心に、ケルト関連書籍を集めてみました。原則として、店主が持っているか、目を通したことがある本のみを扱っています。
※リストアップした時点で「お取り寄せ」表記のものは、外してあります。但し在庫状況は日々変化します。 |
○what i read
○幻想書棚【1.5】
○書棚検索窓口
○書棚専用掲示板
◎特設書架
1.ケルト
2.文庫FT
3.坂田靖子
◎この一冊
|
神 話 | 歴 史 | 妖 精 | ドルイド | 全 般 | 検 索 |
- 中野節子『マビノギオン―中世ウェールズ幻想物語集』JULA出版局/3,500円
- しかしこれは3,500円分の価値はじゅうぶんあるなあ。
完訳ですよ。しかも英語からの翻訳ではなく、ウェールズ語原典からの訳というのがすごい。
訳者の中野節子氏は、すこし前にとりあげた『ファージョン自伝』の監訳者でもいらっしゃるが、なにしろウェールズ語原典に忠実な英訳の『マビノギオン』を手にとったのがきっかけで、これをぜひウェールズ語で読んでみたいと独習書で勉強してみたばかりでなく、中部ウェールズで開催されたウェールズ語集中コースに参加(マビノギオンは中世ウェールズ語、この口座は現代口語ウェールズ語を扱うものだった)、で、これに何年も(つまり何回も)通うことになったというから情熱が半端じゃない。
おそらく、ご当地でほんとうに大事にされている古典、誇り高く語られる『マビノギオン』にふれたのが、その情熱を維持させたのではないかとも感じる。→ more impression
- 井村君江『ケルトの神話―女神と英雄と妖精と』ちくま文庫/500円
- ケルトの神話をわかりやすくまとめた解説本。
図版も豊富だが、白黒プリントしかも文庫サイズなので、いささか見づらい。しかしこの本に収録されている図版たるや、過日東京都美術館でおこなわれた『ケルトの秘宝』展で展示されていたものがめじろ押し……。ほんとに国宝級のものが集まっていたのね。→ more impression
- ディレイニー『ケルトの神話・伝説』創元社/2,800円
- ケルトの神話と伝説の本……そのまんまや。
これは幼い頃からそうした物語をじかに聞いて育ったディレイニー氏による再話であり、だから辻褄があっていたり現代小説的に大団円を迎える話になっていたりして、読みものとしてはおもしろい。だが、細部がどうしても省略されてしまうのが、神話・伝説好きには悲しい。だったら買うなと思われそうだが、しかたない。
しかし一冊の本として見ると、かなり美しく、所有欲をそそる本ではある。カバーはジョン・ダンカンによる妖精画、その枠にはケルト写本の名高いカーペット・ページを配し、本体や見返し、中扉の紙の選択も実に趣味がいい。
そして中扉にまたカーペット・ページ。各話のタイトルを飾るのも聖書からとった飾り罫。
デザイナー氏はさぞや楽しかっただろうと思わせられる仕事ぶり。→ more impression
- 田中仁彦『ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険』中公新書/720円
- ケルト神話のなかでも「他界」への旅をモチーフとするものに着目し、そこからケルト人の「他界」観をみちびきだす試み。3部構成。→ more impression
- 松岡利次『ケルトの聖書物語』岩波書店/2,800円
- 聖書のアイルランド外典(という言葉をあてることについては異論もあるようだが、まあ一応)をアイルランド語から直接翻訳したもの。量的にはあまり多くない。
そもそも聖書をそんなによく知らないので(子どもむけの『聖書物語』を読んだことがある程度。あとはホテルに泊まって眠れないときに、備えつけの『聖書』を拾い読みしたりとか……)、明快に差異を指摘できないのが難。→ more impression
|
神 話 | 歴 史 | 妖 精 | ドルイド | 全 般 | 検 索 |
-
オフェイロン『アイルランド―歴史と風土』岩波文庫/600円
- アイルランドの作家が書いたアイルランド史。
透徹した史観と政治感覚のある作家による歴史書で、アイルランド史全体をひとつの樹木にたとえて説きおこしている。
●第一部 根 ……ここではアイルランドの土台となるケルト人の世界、歴史について語る。このあたりを『チェンジリング』の資料として使うために購入した。後半はとりあえず関係ないので、ほかの資料に眼を通すべく途中で本書を放り投げ、そしてずいぶんたってからまた読み通したという次第。→ more impression
|
神 話 | 歴 史 | 妖 精 | ドルイド | 全 般 | 検 索 |
- カラン『ケルトの精霊物語』青土社/2,800円
- 二巻目を書きはじめてから発見した本。今年に入ってからの刊行。今まで読んだことのないエピソードが多数おさめられているが、著者のアレンジの割合が判然としない感がある。独特の風合いがあるイラストも多数おさめられた美しい本だが、訳文にやや難があるように思われる。原文と比較したわけではないから、うるさいことは言えないのだが、日本語として読んでいてひっかかることが多すぎるのは、読者として嬉しくない。
しかし、それでもなお、神話伝説妖精好きなら押さえておくべき一冊。
実はこれも仕事が忙しくなって、通読できていない。もうすこしで読み終わるのだが……。よって、メールマガジンの方に感想文はない。悪しからず。
- クローカー『グリムが案内するケルトの妖精たちの世界〈上〉』草思社/1,400円
- クローカーが採話したケルト妖精譚『南アイルランドの妖精物語と伝説』にグリム兄弟が注をつけ、さらにクローカーが独自につけ加えたと見られる修辞的な文章を削除し、より素朴なかたちを再現しようとしたものの訳。
というか、グリムによる整形/注釈を参考にしながらクローカー版を訳し、グリムが削除した部分は別途注釈のかたちで訳してある。クローカー版は英語であるし、グリム版はドイツ語なので、グリム版をそのまま訳すより誠実な仕事と言えるだろう。→ more impression
- クローカー『グリムが案内するケルトの妖精たちの世界〈下〉』草思社/1,400円
- 内容は(上)のつづき。どうして二冊に分けたのかなあ。単価をおさえるため? 薄くするため? どちらにせよ、章の途中でぶっつり切れているのは、少々いただけない。ただ、どちらか一冊だけしか買えない事情があるなら、わたしは下巻の方を勧める。→ more impression
- イエイツ『ケルトの薄明』ちくま文庫/560円
- 著者のイエイツは、アイルランドに生まれ、ケルト文芸復興の中心人物となった著名な詩人である。同じちくま文庫から『ケルト妖精物語』や『ケルト幻想物語』の翻訳もなされている。「採話」集編纂のエキスパートであるといってもよいだろう。だが、これらの書物の場合、「採話」をおこなっているのはイエイツ自身ではない。彼はあくまで編纂者の立場から「採話」された物語を眺め、並べ、手をいれているだけである。
だが、そうした立場に飽き足らなくなったのだろうか、みずから各地に足をはこび、実際に見聞きしたものだけをまとめたのが、この『ケルトの薄明』なのである。
それだけに、本書はイエイツ自身の影が色濃く落ちたものとなっている。→ FSF@nifry の「本屋の片隅」用原稿の一部より。
- マクラウド(マクラオド)『ケルト民話集』ちくま文庫/520円
- スコティッシュ・ケルトの仮面女性作家(実際は男性作家)、フィオナ・マクラオドの短編集。ほんとうは「妖精」に分類するのは間違いだろうが、さりとてどこに入れればよいのやら。本来は「ケルト系フィクション」の欄を作るべきなのだろう。同じ著者の『かなしき女王』は、無人島に一冊だけ本を持って行っていいと言われたとき、わたしが選択する一冊の最有力候補だが、「お取り寄せ」ゆえ今回は見送り。かなり以前に読んだ本なので、ウェブ上に感想文なし。とにかくただ「おすすめ」とのみ。
|
神 話 | 歴 史 | 妖 精 | ドルイド | 全 般 | 検 索 |
- ピゴット『ケルトの賢者「ドルイド」―語りつがれる「知」』講談社/3,200円
- ドルイドに関する「古典的名著」と呼ばれる研究書の邦訳。ドルイドそれ自体についての本である以上に、ドルイドというものについて人々がイメージしてきたこと、あるいは現在知られているドルイド像とは時代ごとのイメージ、ヨーロッパ人の深層にある「黄金の時代、高貴な野蛮人」などの概念を体現するものとして潤色されてきたものであるということの検証。
実在するドルイドの資料について、考古学的資料、ギリシア・ローマ系の文献史料、アレキサンドリア系文献史料にわけてその妥当性と「時代の文脈」に関する考察。
さらには、中世以降の「ドルイドの再発見」ともいうべき事象、捏造された資料、ろくに検討もされないままふくらんでいく個人的な妄想(笑いごとではないが、凄いんだこれが)、などなど。→ more impression
- グリーン『図説 ドルイド』東京書籍/4,800円
- つづけてドルイド本。内容は直前に読んだ『ケルトの賢者「ドルイド」』とかなり重なっていて、こちらの論考の方がやや甘く(「〜と考えてもいいだろう」とか。誰が「いい」と許可してくれるの? みたいな)、そのぶん俗説珍説もとりあげられていて幅は広いと思う。緻密さと細心さ、冷淡さでは『ケルトの賢者「ドルイド」』の圧勝だが、ネタを拾うには『図説ドルイド』の方が適切かも。
また、発表された年代に二十年ほどの差があるため、『図説ドルイド』の方がより最新の情報――とはいえ古代の情報というより、現代のドルイドに関する内容が主である――まで網羅されている。
「図説」なので、図版は豊富で、あの本に書いてあったアレはコレか! 等という発見もあって楽しい。→ more impression
|
神 話 | 歴 史 | 妖 精 | ドルイド | 全 般 | 検 索 |
- 『ガリアとブリテンのケルト騎士―ローマと戦った人々』新紀元社/1,000円
- またしても読了していないのでメールマガジンに感想がない本。しかも、イラストレーターさんに譲ってしまったので、今、手元に現物がない。
一応「全般」の項に分類したが、武器/武装に内容を絞って、ガリア〜島のケルトについて語った、「イラストレイテッド」シリーズの一冊。当時の光景を想像して描いたイラストも多く、そのほか発掘物の復元図や線画など、画像が豊富なので、イメージが湧きやすい。なかなかいい本だし、価格もそう高くないし、近所の書店で売ってるし……と思い、さっと譲ってしまったのだが、同じ本を二回買うのはやはりけっこう勇気がいるかも。というわけで、まだ買っていない。
- 鶴岡真弓・松村一男『図説 ケルトの歴史―文化・美術・神話をよむ』河出書房新社/1,800円
- 「ふくろうの本」というのは河出書房新社のビジュアル・シリーズで、とにかく写真が豊富。他社からもトンボの本(だったかな?)とか、同様のサイズの同様のシリーズが出ていたと思う。普通の本よりちょっと横長なバランスというか。
印刷もきれいでカラー・ページも豊富。
必然的に、あまり厚くなく、当然、添えられた文章の量は限られる。
ただ、ケルト関連年表が巻頭についているのは嬉しかった。自分で作らなければならないかと考えていたところだったので。→ more impression
|
神 話 | 歴 史 | 妖 精 | ドルイド | 全 般 | 検 索 |
- 関連キーワードで商品サーチ
- 「ケルト」……かなり品切れ多し。
- 「鶴岡真弓」……『ケルト 装飾的思考』等で著名なケルト学者
- 「井村君江」……妖精学の泰斗
- おまけ
- DVD『virtual trip アイルランド〜ケルトの記憶〜』……写真集がみつからなかったので、景色のイメージを喚起したくて買った。断崖に波が砕けるシーンは好き。
2001.07.02 妹尾ゆふ子 / updated 2001.07.23 |