シリーズ第二作。 →前作の感想
※シリーズもののため、あらすじは、既刊のネタバレを含みます※突然あらわれた奇怪な集団に、なにをする暇もなく大量の人々が殺された――そこには、要人も含まれていた。日の当たらない第四王子に過ぎないフェリオにとっては、ほとんど他人といっていいくらい遠い存在だった、父王と、世継ぎであった第一王子。
かれらの死は、王国に衝撃をもたらした。フェリオにも、哀しみよりは当惑を。無関係のはずだった派閥争いに、彼も巻きこまれようとしていたのだ。亡き王の信任篤かった騎士団長ウィスタルと近い者として。
王都に戻ったフェリオのかたわらには、幼なじみのウルクが控えていた。神姫の親族という立場を利用して、精一杯フェリオの役に立とうとしてくれていたのだ。
そして、異界からあらわれた少女リセリナは、フェリオの前から――いや、庇護してくれていた神殿からも姿を消していた。彼女を追ってあらわれたと思しき兇漢たちを、みずからの手で倒すために。
安心して読める、というのが第一作の感想だったが、第二作も同じ。安心して読める。
舞台を神殿から王都に移し、陰謀渦巻く権力争いにフォーカスしたことで、一冊めとはかなり趣が違っている。異界よりの「来訪者」の存在や、かれらとの不思議な関係などのSF要素が背景に後退し、ごくオーソドックスな、時代がかった世界を舞台にしたファンタジー作品でみられるような、宮廷陰謀劇が主眼になっているのだ。
あらたな登場人物も、王宮まわりの人間が主体となっている。退廃的で破滅願望にとらわれているように描かれている第二王子、派閥争いの一方の頭である文官のダスティア、もう一方を率いる武官のガートルード・サンクレット、その長男で貴族稼業より商業に才幹を発揮しているクラウス、第二王子の婚約者でその妹のニナ、派閥争いにはあくまで傍観者の立場を貫く外務卿のラシアン――などなど。
かれらのほとんどは、派閥争いのため近視眼的な状態に陥ってはいても、真情では国のことを想っているといった描写がなされており、絶対的な「悪」という存在ではない。人物にある程度の厚みがあり、なるほど、こういう人ならこういう思考回路でこの行動に出るだろうな、という説得力がある。
しいて気になった点をあげれば、後半ですっかり陰謀に乗せられ、操られてしまった人物が、ちょっと簡単に騙され過ぎなのでは、ということか。なまじ才気煥発な人として登場しただけに、一時の激情で判断が曇ることはあっても、そう長続きするはずがないのでは? と思ってしまう。
もっとも、陰謀全体が、初動に賭けたような代物――すなわち、長期的な勝利を望んでいないのではないか? 刹那主義的な感覚の持ち主が主導する場合、たしかにこんな展開になるのではないか? とも思わされるものなので、これはこれでいいのか。
かなり本筋からはずれた感想になるが、リセリナより断然ウルク派なので、ウルクには幸せになってほしいなぁ。
読了:2004.02.10 | 公開:2004.02.29 | 修正:--