新宿少年探偵団シリーズ8巻め。
※シリーズもののため、あらすじは、既刊のネタバレを含みます※奇妙奇天烈奇想天外な手段で攻撃を仕掛けてくるマッド・サイエンティストたち――謎の少年蘇芳の手助けを得て戦ってきた新宿少年探偵団の四人だったが、戦えば戦うほど、かれらの望むパラダイム・シフトを推し進めてしまう。しかし、戦わないわけにもいかない。
そして、新宿にはあらたな怪異が発生していた。人が干物になってしまう現象。甘い匂いで獲物を誘い込み、緑の怪物に変成させてしまう植物。捜査一課から指揮権をもぎとった機動隊だが、事態は昏迷を深めるばかりだった。
宿少のメンバーは、事件の背後に大鴉博士と紅天蛾の存在を察知するが――。
久々に読んだので、基本的な設定のあちこちを忘れていがちな自分の記憶力が憎い。
まぁそれはともかく、いつものように破綻なく、きっちりと作られた世界。ほんの端役にまで、なにがしかの実在感というか、生活感があって、狭さを感じさせない。つまり、描写されている世界の外にも、きちんと世界が広がっていると思わせてくれる。
物語の方は、シリーズ全体が佳境に入ってきたところか。壮助たち四人のほか、陰陽師兼警察官の阿倍、もちろん唯我独尊高飛車少年の蘇芳様や、すっかり馴染みとなった敵役たちも、それぞれの運命の流れに応じて翻弄され、あるいは次なる展開へと飛翔してゆく。
冒頭のあらすじ以上のネタバレを避けるため、曖昧にしか書けないので、なにがなにやら。
今回、蘇芳様から支給の新兵器等はなく、宿少のマッド・サイエンティスト(笑)神崎謙太郎くんが、変形ロボを作ったり、IAスキャナーを作ったりと活躍。
「IA? 今度は何の略だ?」
――陰謀なんか暴いちゃうぜ(Inbou nanka Abaichauze)スキャナー。
「あーあ……」(p.185)
読み終えてなんとなく哀しいのは、うどん屋のエピソードか。この時期に新宿に店を出してしまったのが、運が悪かったとしかいいようがないのだが。というか、ほんとに端役(読めばわかる)のうどん屋につい感情移入してしまうくらい、丁寧に書いてあるんだよなぁ。それが凄いと思う。
結末は、かなり「つづくッ!」風味の強い体裁をとっているので、続刊が早めに出ると嬉しいなぁ。
読了:2004.02.14 | 公開:2004.03.04 | 修正:--