世界を破滅する力を宿す「災禍の心臓」。そして、それを追う異能者集団、「慟哭の三十人衆」。強大な魔力を持ちながら、心臓の宿主はみずから戦うことができない。だから、「心臓」は「騎士」を任命する。
心ならずも「災禍の心臓」を移植され、宿主となってしまった高校生、遠野忍。これまた心ならずも「第五の騎士」として戦う羽目に陥った、沢村智美。そして、やはり巻きこまれて智美の「剣精」となってしまった櫻井優子。
クラスメートを巻きこむ惨劇から復活する暇もなく、次々に襲い来る「慟哭の三十人衆」。かれらは忍の従姉妹で元恋人でもある鹿山美由紀を狙っている。美由紀にことの真相を知らせれば――そしてもし彼女がこの突拍子もない話を信じれば、きっと自分も騎士になるといいだすだろう。
それだけは避けたい。自分のように、人を殺させたくない。智美の強い願いに流されるかたちで、三人は美由紀を陰ながら護衛することに決めた。具体的には、顔の割れていない智美が、登下校の電車で遠巻きにするという戦法だ。目立たないことには絶対の自信がある智美だったが――。
シリーズ第三巻、遂に登場。と表四に書いてあるのだが、まさしく「遂に」という感じ。しかも終わってないし……。終わってないこと自体は問題ないわけで、まだまだつづきが楽しめるのは歓迎すべきで、しかし大河長編に弱いわたし、しかも刊行期間があくとすっかり読む気がなくなる身には、このシリーズのペースは、けっこうツライのであった。
ツライにもかかわらず第三巻を探してきっちり読んでるあたり、愛着っぷりが窺えるわけで。
女子高校生友情小説として、もうこれ以上ないってくらい突き抜けた完成度(というか、完結してないから未完成度?)を誇るシリーズ、べつに血縁でも前世からの因縁でも宿縁でもなく、ただ同じクラスになって、思いのほか気が合って、仲良くなって――というふたりの女の子が、大惨事を前に揺れる心を奮い立たせて戦い、お互いへの信頼を確認しあっていくという、その手探り感がたまらないのである。
ふたりとも、ほんとに、いい子なんだよなあ。
当事者のはずなのに蚊帳の外、という忍も、いろいろ頑張っているようで、いい感じ。
前巻を読んだときは、なんとなく「……思いこみ強くてサイコさんみたい」という感想を抱いてしまった美由紀嬢も、今回はかなりナチュラルな女の子っぽくなっていて、好感が持てた。
まぁ、『カラミティナイト』でサイコさんといえば、ストーカー教師雪村をその第一人者と認定さぜるを得ないのだが、相変わらず真面目なストーカーっぷりで。なんともはや。
今回のおまけ特典。真島恭子伝。続編に期待。
おまけ特典その2。既にウェブ上から消えて久しい智美の幻の作品「黒騎士物語」。今、ここによみがえる!
いやぁ……。
ともかく、一気に読まされる。作品世界に読者をぐいっと引きずりこむ、著者の筆力には脱帽。できれば、もう少し……少しでいいので、刊行ペースを早めに。祈。
読了:2004.02.15 | 公開:2004.03.04 | 修正:--