what i read: 天皇の祭り 
大嘗祭=天皇即位式の構造


*Cover* 書名天皇の祭り 大嘗祭=天皇即位式の構造
著者吉野裕子 Hiroko Yoshino
発行所講談社(講談社学術文庫)
発行日200.11.10(『大嘗祭――天皇即位式の構造』弘文堂/1987)
ISBN4061594559

 著者は、少し前に『丹生都比売』(*1)の感想文でお名前をあげたばかりだから、ぱっと見て「ああ」と思われたかたもおいでだろう。あのとき、
「そういえば、ほかにはどんな本を書いておいでなのかなあ」
 と思いたって検索して、文庫/新書で買えるものは一応ぜんぶ注文してしまったのである。そのうちの一冊が、これ。

 天皇即位式のときに執り行われる大嘗祭という祭りが、実は祭神がなんであるか判然としていないという話からはじまって、伊勢神宮の祭神や祭りとの対比させ、日本古代の人々の心性に深く刻みこまれていたであろう中国の易/陰陽五行思想等を援用して論を展開した一冊。これがまたすぱすぱと切り込みのするどい思考と文章で、非常におもしろく読めた。
 中身は簡単には説明できないのだが、……以下に、なんとなく。
第一章 践祚大嘗祭
I 御禊
大嘗祭の執り行われる「場」の図面から見て、「東」がことさらに解放され、強調されていることなど
II 大嘗祭の概要
大嘗祭の日取り・斎場の作成と廃棄までを含め、その時間および空間の構成についての説明。
III 大嘗祭の原理
大嘗祭における諸要素……天皇、日取り、時刻、方位、名称そのほかについて
  
IV 大嘗祭と伊勢神宮祭祀
ふたつの類似性から、まず伊勢神宮祭祀を解き明かすことが大嘗祭の解明につながるという説明
第二章 陰陽五行と伊勢神宮の祭りおよび大嘗祭
I 伊勢神宮の秘神・太一と北斗
伊勢神宮が祭っている神とはなにか、それは伝来し、重要視されていたに違いない中国の思想を反映して、アマテラスに習合された太一神(北極星)だったのではないかという考察。大嘗祭と共通の名前を持つ「ユキ」大御饌の「ユキ」とはなにか
II 荒祭宮考
特別な位置づけをされている「アラマツリノ宮」についての著者の私見
III 神衣祭と南斗
北斗七星と対照される南斗の意義について、そしてそれが祭りのなかに密やかにとりこまれていることについての考察
IV 伊勢神宮の祭祀構造
太一(北極星)に神饌を運ぶ天空の「匙」としての北斗と南斗の象徴的位置づけ、それらを裏づける考察
V 伊勢神宮の祭屋構造
地上に天空の配置を現出せしめる角度、「子」の方位(北)を重視し、中心に置く大嘗祭との附合、抜穂の謎と蟹伝説
第三章 大嘗祭の実相
I 大嘗祭の祭神
第二章での考察をふまえ、祭祀相似性と祭神の同一性について考察する
II 大嘗祭の神座
大嘗宮内の調度のかたちや配置等から読みとる、「神饌を運ぶ匙」の隠喩、その他
III 天皇の礼服
大嘗祭における天皇の着衣とその意匠の解題。中国皇帝の着衣との比較と考察
IV 枕詞「御食向かふ」
従来は「向かい合って食べる」ことと解釈されている「御食向かふ(みけむかう)」は、「食べ物が彼方(=はるかな星辰の神のもと)へ運ばれて行くさまをあらわす言葉ではないかという考察
V 大嘗祭における「数」の種々相
大嘗祭で重要視されているいくつかの数字について、易/陰陽五行思想からの解題
VI 「酒造童女(サカツコ)」の推理
大嘗祭の諸祭事において、ほかの者に先んじて手をつける役目を帯びた神聖童女「サカツコ」を、伊勢神宮における聖童女「大物忌」と比較しながら、「易」のことわりをもって説明する
第四章 蒲葵(びろう)と物部氏
原始民族における蛇信仰についての論の展開。詳細は『蛇 ―日本の蛇信仰』(*2)に譲る。

 以上。
 第四章はたしかに『蛇』の内容を駆け足でおさらいしているような感じで、全体から浮いているように感じられなくもなかったが、わたし個人としては「おさらい」ができてラッキー。
 易や陰陽五行思想についての簡単な解説もあるので、そのへんに興味がある人にも勧められる一冊。


*1丹生都比売
 草壁皇子の少年時代における不思議かつ悲しくも美しい体験を、幻想的に語った佳品
 →感想
*2蛇 ―日本の蛇信仰
 同じ著者による蛇信仰についての詳説。おもしろい。
 →感想

読了:2001.11.18 | 公開:2001.11.19 | 修正:2001.12.28


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