what i read: どうにもならない五里霧中?
〈フルメタル・パニック!〉


書名どうにもならない五里霧中?〈フルメタル・パニック!〉
著者賀東招二 Shouji Gatou
発行所富士見書房(富士見ファンタジア文庫)
発行日2001.10.25
ISBN4829113898

 フルメタル・パニック! のシリーズ最新刊。番外編短編集の五冊め。シリーズ通算では十冊めにあたる。……本編と番外編が同じ量かー。

●「純で不純なグラップラー」
 かなめと恭子が街で暴漢に襲われたとき、助けてくれたのはやけに無愛想な中華料理屋の店員だった。徒手空拳で相手をたたきのめしたその実力にかなめはいたく感心するが、愛想の悪さは宗介以上。しかし、かっこいいものはかっこいい。宗介に話すと、「かっこいいからといって戦局を有利にすることができるのか?」みたいな反応だ。ため息をつきつつ、今日の生徒会のお役目を果たしに向かうかなめと宗介。空手同好会が使っている建物が老朽化したので取り壊さねばならないのだが、なぜか話はこじれ、空手同好会の面々を宗介が倒せば取り壊しに応じ、逆に負ければかなめが同好会のマネージャーにされてしまうことに!?
 ……という話で、お約束満載。展開は読めるのだが、お約束を踏まえての話運びとフルメタのキャラならではの楽しい反応が、読む者を飽きさせないクオリティ。

●「善意のトレスパス」
 中華屋の店員こと拳法家の一成と宗介は、いがみあってばかり。原因となっているかなめは、いまいち自覚がないのだが、ともかくそのパワーをもっと有意義なことに使いたまえ、という生徒会長の采配で、ふたりは負傷した用務員氏の面倒をみることになった。しかし、そこでもまた競い合い、いがみあい、諍いが絶えない――。
 ……あー。これは用務員さんが可哀想すぎる話ですというか最強な話。

●「仁義なきファンシー」
 生徒会役員のひとりであるお蓮さんの家は、実はヤクザ屋さんだった! しかも、とにかく突っ込んでいく血気にはやった組員ばかりで、戦闘方法がなっていない! その上抗争で負けそうだ! いきがかり上、組員の訓練を請け負うことになってしまった宗介は、毎度おなじみボン太くんのぬいぐるみを着用していた。音声ユニットが妙であることを除けば、実戦向けにカスタマイズしてあるのだ。珍妙な指導員のもと訓練にあたる組員たち。だが、まだろくに成果が上がらないうちに、大事件発生。突撃する気満々の組員たちだが、このままでは負けは必至だ。そのとき宗介が思い至った新兵器とは!?
 ……ふもっふ! ふもっ、ふもっふ! ボン太くんもの。

●「放課後のピースキーパー」
 公園を巡って争うふたつの小学校の児童たち。その影には、ふたりのリーダー格の男の子が、ひとりの女の子に「ええカッコしい」をして見せたいという欲求があるらしい。これは根深い。調停役をたのまれた宗介は、いつもの彼に似合わず、ひたすら弁舌による説得を試みるのだが――。
 ……ここに登場する小学生は、いつぞやの幽霊事件の仕掛け人たち。キャラを使い捨てないなあ、と感心する。最後が爽快。

●「迷子のオールド・ドッグ」
 尾行されている! かなめの手料理をご馳走になる約束でともに帰宅していた宗介は、とりあえず尾行者のようすを窺うため、薬局に入って買い物のふりをした。怒ったかなめは一人で帰ってしまうが、宗介の方は尾行者の正体をつきとめた……というより問答無用で攻撃されてしまった! なんと相手は旧帝国海軍中尉殿。一介の軍曹である彼は、中尉殿が奪われたタブン入りのバッグを捜索すべく、行を共にすることになる。
 ……わははは。なにがおかしいって、p.193の「握りこぶしで、ずけずけと歩く(中略)爆発的な行動力」まで。そうか、宗介ってこういう風に認識してるのかー! なるほど! と妙にウケてしまった。や、いいキャラです、中尉殿。

●「わりとヒマな戦隊長の一日」
 テッサは身に覚えのない場所で目を覚ました。いったいなにが起きたのかと彷徨い歩いていると、そこには宗介が。夢のつづきかと思って甘えてしまったが、よく考えてみるとこれは……夢ではない!?
 起き抜けのボケた頭でしでかしたこととはいえ、なんたる醜態。狼狽して宗介のもとを去ったが、昨夜の記憶のところどころにまだ抜けがある。しかも、大切なぬいぐるみがない。部下に命じて探させようにも、「茶色い子犬さんです。あれがないと、わたしは睡眠がとれません」と言うわけにはいかないではないか! 飽くまでさりげなく、テッサは基地内をうろつきながら、目標の発見につとめるが――。
 ……わたしは宗介とかなめが早くくっつけ! という短気派なので、基本的にテッサは「邪魔すんなー、小娘!」とつい思ってしまいがちなのだ。だがしかし、この話ではあまりにもテッサが可哀想であり、同情の余地がありまくりである。宗介……。なんて鈍いんだ!
 しかし宗介が鈍くないとこの話は始まらないという説もあり、身悶えしつつも楽しく読んでしまう自分がここに。うーむー。
 というわけで、いつも通りのクオリティで期待を裏切らない出来栄えの短編集。しかし本編のつづきはいつなのか。テロ事件の影響で放映が延期になってしまったアニメはいつ見られるのか。宗介の声が関智一氏=わたしにとってはバァンさま、なので、妙に期待しているのだ。
 あー、最近アニメ見てないなあ。

読了:2001.11.08 | 公開:2001.11.12 | 修正:2001.12.24


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