Romancing Saga -Minstrel Song-
THE FLOWER OF THE EMPEROR

マルディアスの天よ地よ 
そして流れゆく時よ
我が声をして語らしめよ 
そして祈りを与えよ
updated: 2005/09/25

- story -

 大神マルダーによって創られた世界マルディアス。上古、そのマルダーとサイヴァとのあいだに、世界を破壊し尽くすほどの戦があった。サイヴァがその戦の切り札として、みずからの小指から生み出した神は、しかしサイヴァに歯向かってマルダーの側についた──その神こそ、光の神エロール。荒廃し、ほとんどの神が見捨てて去ったマルディアスに踏みとどまり、「人」を創ったのも、このエロールだと伝えられる。

 やがて、サイヴァの骸から生まれた三邪神、デス、サルーイン、シェラハとの戦いにあたって、人間たちの英雄ミルザの後押しをしたのも、エロールだった。光の神は、サルーインの力を押さえるために、ディステニィストーンと呼ばれる十個の宝石を生み出したのだ。

 破壊神サルーインは英雄の命を犠牲にして封印され、約千年が経過した。今では炉端の昔語りとなり、まともに信じる者も少なくなった忌まわしい過去が、よみがえろうとしていた。エロールすら予期しなかったその危機に、立ち上がったのは、またしてもエロールの子と呼ばれる「人」であった。

 千年のあいだに、サルーインの力を抑えるディステニィストーンは、世界中に散っていた。北バファル大陸に覇を唱えるローザリア王国には、そのひとつがあるという。ただし、王宮に安置されているのではなく、湖に沈められているというのだ。

 クリスタルレイクの北にある王国の都、クリスタルシティ。旅人たちが行き交う酒場で、詩人は語る。

バファル帝国が全盛期にあった頃、レリア4世は若い女性だけの部隊を作り、身辺を警護させていました。

ローザ・ライマンは、長年その隊長として皇帝を護ってきましたが、三十歳を過ぎて隊を離れることになりました。

皇帝は戯れに、ローザの着替えを覗き見しました。

他の娘達の美しい肌と違い、ローザの体には深い傷、浅い傷と無数の傷が刻まれていました。

皇帝は、ローザがいかに体を張って自分を護ってきたかを思い出し、恥ずかしくなりました──

 時代をさかのぼること、数百年。

 わずかにその盛運に翳りを見せつつ、なおも栄華を誇るバファル帝国。レリア四世は、御年十歳。名ばかりの皇帝は、宮殿を抜け出して忍びこんだ図書館で、偏屈な法務官へルマンと出会うことになった。あまりに無礼なこの法務官に刃を向けた少女こそ、十四歳にして既に幾多の刺客を屠って来た皇帝の護衛、ローザだった。

 昔語りに伝えられるバファル皇帝レリア四世と、ローザリア王国勃興の祖であるローザ、そしてレリア四世からローザに下賜されたというディステニィストーンにまつわる、これが「人」が作った物語──。