ノベライズのお話をいただいてから、ゲームをプレイしたわけですが(発売の日程上、通常はどうしてもそうなります)、あまりおもしろいので、仕事そっちのけでのめりこみました。プロットを提出し、開発のかたに直接質問の機会を得る前に、二周目に突入していたくらいです(これを書いている今は四周目です。まだまだですね!)
はじめから、「ゲーム自体の」ノベライズではなく、「過去の設定があるので、そこから好きな場所を選んで」小説にしてください、とのご依頼でした。プロットを二種類提出し、先方に選んでいただいたのが、この『皇帝の華』になります。
河津さんに直接お会いしてご意見をうかがったときに(よほどゲームを持って行ってサインを入れてもらおうかと思いましたが、仕事の打ち合わせでそれは駄目だろうなぁ、と自分を律しました。今は後悔しています。やっぱりサイン入れてもらえばよかったです。はい。素直に生きたいものですね!)、このプロットではレリアが年齢より幼くないですか、とのご指摘を受けました。
だったらほんとに幼くしてしまえばどうか。というわけで、最初は16歳から始まるはずだった話が、10歳スタートになりました。
この物語が元になったゲームを愛するみなさまに受け入れていただければ、これほど嬉しいことはありません──が、逆に「こんなのローザじゃない!」と思われるのも、それはお読みいただいたかたの自由だと考えます。
もちろん、開発元に丹念にチェックしていただいて「ゲームと矛盾する記述はない」とのお墨付きはいただいています。公式ノベライズですから。ですが、いただいた設定書はアルティマニアに載っている内容(もちろん攻略記事除く)とほぼ同じです。打ち合わせのときに口頭で質問してご回答いただいたくらいしか、一般のプレーヤーと比べてのアドバンテージはないのです。
わたしは、わたしが考えて書いたこの話を大事に思っています。ですが、ひとりずつが自由に世界を旅し、物語を紡いでいけるのが『ロマサガ』の良さです。
どうか、ご自身の物語をまず大切になさってください。その上で、若くして皇帝になったレリアと彼を護ろうとしつづけたローザの物語も、あなたの「マルディアスの真実の物語」にくわえていただけるなら、それは幸運なことだと思います。
マルディアスを旅する仲間たちに、幸運を。
そして、三年も新刊が出ない作家を辛抱強く待ちつづけてくださったかたがたにも、どうか気に入ってもらえますように。
必要とする人のところへ、この本が届いてくれれば、と希うばかりです。
末筆ながら、とんでもなくかっこいいローザを描いてくださった小林智美さまをはじめ、スクウェア・エニックス社の編集氏やゲーム内容との矛盾をチェックしてくださったかた、おそろしく短時間で表記揺れリストまで作成してくださった校閲さま、相談にのってくれ励ましてくれた友人たち、その他、出版にかかわってくださった、すべてのみなさまに感謝します。
Sep. 2005 妹尾ゆふ子