第十五回ファンタジア大賞・準入選作『天華無敵!』(*1)のシリーズ第二弾。
※シリーズもののため、あらすじは、既刊のネタバレを含みます※最高難易度を誇るといわれる遺跡、ドラゴンを攻略した遺跡探索者(ロスト・リサーチャー)・天華。しかし、天華の表情は冴えない。
最高を窮めてしまったことで、次の目標を見失っているのだ。しかも、結局その最高でさえ、父を凌ぐことができなかったなんて――。
そんな天華のもとへ、謎のメールが届く。文字化けがひどくてほとんど解読できなかったが、妹の白華とふたりだけの専用衛星回線から届いたメール、発信人は妹に決まっている。かろうじて読みとれたのは、「世界」「滅」などの文字。白華は精霊を見ることのできる龍眼の持ち主だ。精霊が滅びを予言したのか? しかし、神殿へ駆けつけた天華は、メールの発信人は白華でないことを知らされる。
誰が、回線に割りこんだのか。
そして、当惑するふたりの前に、次なるメッセージが届いた。こともあろうに、七万キロの上空、【旧精紀】の遺物である軌道エレベーターのてっぺんへと、天華を誘うメールが。
元気少女天華とクールな相棒G、たおやかながら芯は強くて姉を一途に信じる白華、幼なじみで天華にふり回されてばかりの剣聖アルバルドと彼の無茶苦茶なクルーたちの愉快な冒険が、ふたたび。
あとがきによると、かなりの難産だったようだが、その甲斐あって、前作を凌ぐリーダビリティをもつ作品に仕上がっている。とてもデビュー第二作とは思えない。まったく最近の若い人はみんなうまいよね……。
いやまぁ、それはともかく、やはり天華のキャラクターが実に生き生きとしているのが、いい。この作品の魅力を支える屋台骨といえるだろう。彼女にふりまわされる周囲の人々は大変そうだが、大変大変といいながらも、楽しんでる感じが伝わってくる。とことんいいように使われているアルバルドとか。……彼は、ほんまに大変そうやな。
「あのあのあの」が口癖の謎の少女プロテの活躍が、もうちょっと欲しかったかなぁ、と思うのは、贅沢かな。
一作めは、世界設定まわりが気になったが――忌まれるはずの〈先祖返り〉の特殊能力者だけでチームを組んでいたり、とくに差別されているようすもなかったり、〈遺跡〉とふつうの人々の生活とのかかわりもなんだかよくわからないし――二作めとなる本書では、普通の人まわりの描写がバッサリとなくなっているせいで、却ってそのへんが気にならなくなっている。
冒険者たちに完全にフォーカスしているので、ごく普通の人々はどうしているのか、という情報は物語に関係してこず、自然、忌まれるはずの〈先祖返り〉がなんでこうのほほんとしているのか? などという疑念もわかずに済むのである。
今後の展開でどう処理していくのかはわからないが、一読者としては、おとなしく次作の公刊を待つしかない。
読了:2004.02.29 | 公開:2004.03.27 | 修正:--