what i read: 監視カメラ社会 
もうプライバシーは存在しない


*Cover* 書名『監視カメラ社会 もうプライバシーは存在しない』
著者江下雅之 Masayuki Eshita
発行所講談社(講談社+α新書)
発行日2004.02.20
ISBN4-06-272242-9

 いただきもの。江下さん、ありがとうございます。

 監視する/されることが容易になった現代社会の、個人/国家レベルでの監視についての概論。コンパクトにまとまっているので、これ以上要約のしようがないという感じだが、さっと内容をなぞってみる。

第一章 覗き見社会と監視社会

 進化した技術が実現した、どこにでもある盗撮の危険性。携帯電話カメラで気軽に他人を撮影する行為、高速道路に設置された機器などもある意味では盗撮である。個人のなにげない行為から、国家権力が保持するといわれる強力なシステムまで、「盗撮」の範囲は広がっているのである。

 監視は犯罪を抑止し、暴くこともあるが、それは同時に我々を知らぬ間に盗撮の被害者にすることにもなっている。とはいえ、既に監視を免れるすべはなく、我々にできるのは有効な監視を選択する、という途だけなのかもしれない。

第二章 NSAとエシュロン

 エシュロンとは、米国防総省が開発したといわれる、地球規模の通信傍受システムである。米国政府はその存在を公式には認めたことがないが、その存在はさまざまな証言や証拠から確実視されている。

 エシュロンは米国以外の国も加盟国としてネットワークし、情報の提供をおこなっているといわれている。当然、日本もそこに含まれるだろう。また、エシュロン以外の類似のシステムを、各国政府が開発しないはずもない。

 エシュロンがもたらす情報は、米国企業の外国での交渉を優位に導くために使われている、という証言もある。

 しかし、エシュロンにも技術的限界があり、噂されるほど万能の傍受機械とはいえないだろう。だが、エシュロンにつづくシステムは今も開発されつづけているはずで、当然、監視の目や耳は強化されていくばかりである。NSAはインターネットの検索ロボットと同様のシステムでwwwにアクセスし、頻繁に情報を集めている。そうして集められた情報はデータベース化され、日々蓄積されていく。

第三章 インターネットの監視

 会社でインターネットにアクセスすることなど日常の作業となったが、たとえば、会社が社員のメールを閲覧したり、どこにアクセスしたかのログを確認したりすることも、監視の一形態である。

 セキュリティ上、LANでどのようなアクセスが行われたかを監視しないのはあやうすぎるが、どこまでが正当な監視であり、どこからが行き過ぎになるのか。

 問題は会社だけではない。インターネット上で交換されるメールも傍受されている。先述のNSAは外国人、つまり米国人以外のメールを監視しているし、では米国人は監視の手を逃れているのかといえばさにあらず、かれらはFBIによって監視されている(カーニボー)のだ。

 そして当然、監視したがっている政府は米国だけではなく、また国家だけが覗き見をしようとしているわけでもない。

 また、個人のパソコンをインターネットに繋ぐことで、P2Pのようなファイル交換システムが出てきたが(例:Napster)、このシステムを使った楽曲ファイルの交換などで、著作権問題が発生した。違法コピーを防ごうとする業界側の対策は、あらたな監視システムの発生を促すこととなった。

第四章 安全を守る監視社会

 技術の進歩による「どこでもコンピュータ」状態が、「どこでも監視」に結びついている。マイクロチップは個体識別情報にもちいられるし、GPSが位置情報を提供するのはカーナビ等で誰でも知っての通り。 しかし、たとえばGPSはもともと米国が軍事利用のために開発したシステムである。利用者が増せば増すほど、GPSにはデータが集まり、蓄積されていく――管理し、監視したいと念じている側には、好都合きわまりない展開なのだ。今や誰もが持っているという状態に近くなってきた携帯電話も、位置情報をつねに発信している。

 そして、ますます身近になってきた監視カメラである。マンションで、商店街で、街路で、数を増やしていく。監視カメラはたしかに犯罪を抑止する効果があるかもしれない。我々はその恩恵を受けている。しかし、どこまで増やせばいいのか。どこで、監視の手を止めるのか――際限なく増えつづけるカメラを拒否する権利を、我々はまだ保持しているのだろうか?

 ……とまぁ、ここまで書いて疲れたので、興味を持たれたかたは、ぜひ、ご自分でお読みいただきたい。おもしろいし。ここから先の章題は以下の通り。

 奇しくも先日、東京都杉並区で監視カメラに関する条例案が可決されたばかり。監視カメラを設置する際には届け出の義務を設け、犯罪捜査などで情報提供を求められた場合以外は公開しないこと、公開してしまった者に罰則は与えないが「誰が公開したのか」を公開する場合があること、などという内容らしい。たまたまニュースで見た程度なので、詳しくは知らないが、なるほどの内容。

 所帯じみた話をすると、わたしが借家住まいをしているマンションも、ロビーにカメラがある。あれを見るたびに、ゴミの収集日でもないのにゴミを出している人を特定して注意してくれないかなー、と思ってしまうのだが……(笑) まぁ、そんなことのために設置しているわけではないだろうから、しかたない。

 むしろ、もしそのカメラが原因で注意されるようなことがあれば、それは行き過ぎた監視というものだろう。

 でも、ゴミはゴミの日に出しまショウ。たのむよ……。

読了:2004.02.26 | 公開:2004.03.21 | 修正:--


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