what i read: 詩経 
中国の古代歌謡


*Cover* 書名詩経 中国の古代歌謡
著者白川静 Shizuka SHIRAKAWA
発行所中央公論新社(中公文庫BIBLIO)
発行日2002.11.25
(『詩経』中公新書/1970.06、
『白川静著作集 9 詩経I』平凡社/2000.08)
ISBN4-12-204130-9

 古代中国の『詩経』を、成立基盤が似ている『万葉』と比較しながら分析・解釈し、旧来の教学的な解釈を退けた一冊。

第一章 古代歌謡の世界
 そもそも「歌謡」とはなにか、神々との交感のための祭式、呪術としての歌謡の起源から説きはじめる。
第二章 山川の歌謡
 古代の祭礼に発するモチーフが目立つ詩をとりあげ、氏族社会の根幹をなす祭礼のための歌から、氏族社会崩壊によってその神事的な色合いが薄れ、民族的な行事や歌垣の類へ発展していった流れを示す。
第三章 詩篇の展開と恋愛詩
 神との交渉のために生まれた歌謡が、個人の叙情的なものをあらわす内容へと変化していったことを説き、政治的な解釈が付会されていた詩などを、男女の情愛を示す詩として読み直す。
第四章 社会と生活
 結婚や公役、国の滅亡による貧窮や流浪、悼亡など、実際の生活に根ざした詩を紹介する。
第五章 貴族社会の繁栄と衰落
 詩篇の絶対年代や、詩篇が実際に生活に生きていた時代=周王朝の没落への流れを詩から読みとる。
第六章 詩篇の伝承と詩経学
 その後も人々の学識として、古典として、聖典として、伝わってきた『詩経』の辿った道筋の概説など。

 わたしは『詩経』についてはほぼ無知な読者で、著者が比較対照としている『万葉集』についても、教科書で習った程度の知識しか持ち合わせないが、非常に興味深く読めた。

 中国人の学問も、詩も、実際的なものとして発達してきたという論も、おもしろい。成立基盤が似ていることから、『万葉』とあわせて研究すべきだといいながら、その際に注意せねばならない相違点として、

 わが国では、社会的な問題もおおむね個人の心情の次元に収斂されてしまう。中国では、個人の問題もときには社会の問題として投影され、社会との関係という形で表現されるのである。(p.314)

 とあるのが、なるほどなぁ、と思わされた。革命思想なども、個人(皇帝)→社会という思考の流れに支えられているのだろうか。

 実際に引用されている詩も多く、読み下し文の独特の調子を愉しむだけでも嬉しくなってくる一冊。

読了:2004.01.19 | 公開:2004.01.21 | 修正:--


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