書名 | 詩経 中国の古代歌謡 | |
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著者 | 白川静 Shizuka SHIRAKAWA | |
発行所 | 中央公論新社(中公文庫BIBLIO) | |
発行日 | 2002.11.25 (『詩経』中公新書/1970.06、 『白川静著作集 9 詩経I』平凡社/2000.08) | |
ISBN | 4-12-204130-9 |
古代中国の『詩経』を、成立基盤が似ている『万葉』と比較しながら分析・解釈し、旧来の教学的な解釈を退けた一冊。
わたしは『詩経』についてはほぼ無知な読者で、著者が比較対照としている『万葉集』についても、教科書で習った程度の知識しか持ち合わせないが、非常に興味深く読めた。
中国人の学問も、詩も、実際的なものとして発達してきたという論も、おもしろい。成立基盤が似ていることから、『万葉』とあわせて研究すべきだといいながら、その際に注意せねばならない相違点として、
わが国では、社会的な問題もおおむね個人の心情の次元に収斂されてしまう。中国では、個人の問題もときには社会の問題として投影され、社会との関係という形で表現されるのである。(p.314)
とあるのが、なるほどなぁ、と思わされた。革命思想なども、個人(皇帝)→社会という思考の流れに支えられているのだろうか。
実際に引用されている詩も多く、読み下し文の独特の調子を愉しむだけでも嬉しくなってくる一冊。
読了:2004.01.19 | 公開:2004.01.21 | 修正:--