いただきもの。ゆうきさん、ありがとうございました!
舞台は近未来都市。警官を志す若者たちが通う大学といえど、イジメすれすれの悪ふざけや差別、偏見と無縁ではない――。日系人であるパトリック・タツカワは、友人にたのまれてコーラを買って戻ったとき、舌打ちをする羽目になった。駐車スペースにはメモが残されていただけ。はじめから、コーラが欲しかったのではなく、彼を置き去りにするのが目的だったのだ。
徒歩では、寮の門限に間に合うとは思えない。少しでも近道をと裏道に足を踏み入れてから、パトリックは後悔することになった。テール・ランプを灯したまま停車している、彼を置き去りにして逃げ去ったはずの友人たちの車を見たときに、その想いはさらに深まった。彼がブルっているのを見て笑おうというのだろうか?
しかし、かれらは既に笑うことのできない身になっていた。全員が血にまみれ、死んでいたのだ。その場で唯一生きて動いていたのは、ひとりの少女だけだ。脅える少女に声をかけたパトリックは、目の前で、彼女の胸部に風穴があくのを見ることになった。彼も銃を抜いて応戦したが、敵の射撃の的確さに恐れ入ることしかできない。そして、信じられないことながら、鮮血をまいて倒れたはずの少女が起き上がるのを、彼は見た。その腕は変形し、翼のような形になり、愛らしかった顔は醜い怪物となり果て――そして、アーマーが降ってきた。甲冑としか見えないもので身を鎧ったその巨大な人影は、少女の身体を車のシートに叩きつけ、次いで、頭部を粉砕した。パトリックは喉をつかまれたまま銃を連射したが、相手はびくともしない。薄れかけた意識が途切れる直前、彼は人影を見た。彼が知っている人物の顔を。
近未来ホラー・アクション? 吸血鬼もの。
あああ? なんで? この本の感想、二回書いて二回ともちゃんと保存できなくて消えちゃったんですが……。同じ本について何回も書くとどんどんテンション低まってしまうので、弱ったなあ。
しかし頑張って書くしかないので書く。やや簡潔な感想になってしまった点は、ご寛恕願いたし。
映像的な小説。映像的な文章というのではなく、小説自体が映像的。自分でも書いていることの意味がよくわからなかったりするが、とにかくそう感じるので書いてみる。映像的な小説。いや、むしろ「映画的」という方が正確か?
吸血鬼ものとしては、わりとオーソドックスな設定ではないかと思われる。ただ、トップに立つ吸血鬼の出現に至る経緯は特殊で、これが主人公格のキャラクターたちの生い立ちとまじわっているため、なんで自分が巻きこまれるの、的な理不尽さを感じさせない。
こういうところ、作者はうまいと思う。キャラ個々人の過去を使った深めかた。
ただ、対立勢力の構図がやや複雑に過ぎるのではないかと思った。あまり分厚くもない文庫本一冊として考えると、警察勢力(市警とFBIはいがみあっている)、秘密結社その1、秘密結社その2、吸血鬼側、独自行動のヒロイン、独自行動せざるを得なくなったヒーロー、とバラバラなので、頭のなかに入って来づらいのである。
しかしこれが長編シリーズの端緒であるなら、このくらいの風呂敷を広げることも変ではないと思われる。
つづきは出るのかなあ。売り上げ次第ってところなのだろうか。
ああ、なんか最近いろんな意味で不況が憎い。
追記。著者はもともとコバルト文庫の出身だが、最近の著作を読んだ限りでは、残酷/残虐描写に力を注いだとき、もっとも文章に迫力が出るような気がする。スプラッタ系のホラー、あるいは異常殺人ものなどに適性があるのではないかなどと思ったりもする。
ほんとうは『
戦国吸血鬼伝』のつづきが読みたいので、伝奇小説と言いたいところだが、伝奇系の受け皿って今どこかにあるのだろうか……。『戦国吸血鬼伝』はほんとにおもしろかったのに、つづきが出せない状況とは。世の中間違っとるよ(わたしにとって)。
読了:2001.11.19 | 公開:2001.11.22 | 修正:2001.12.28