what i read: 三国志 一の巻 
天狼の星


*Cover* 書名三国志 一の巻 天狼の星
著者北方謙三 Kenzo Kitakata
発行所角川春樹事務所(ハルキ文庫/時代小説文庫)
発行日2001.06.18(角川春樹事務所/1996.11)
ISBN4894568683

 ゲーム『真・三国無双 2』にハマった。
 ハマった結果、三国志ってどんなだったっけなあ、という「おぼろな記憶をたどる」行為が増えた。
 ちょっと読み返そうか、でも以前読んだ吉川英治版よりどうせなら最近文庫落ちしはじめた北方版を読もうかな。
 ……これが間違いのはじまりである。

 違うのだ。北方版三国志はかなり独自色が強く、つとに有名なエピソードが省かれていたり置き換えられていたりして、「いわゆる三国志」を読んでいる気がしないのである。なのに、ものすんごくおもしろい。あれっ、記憶と違う、違う、これも違うあれも違う、でもおもしろい。そんな風なのだ。
 本来意図していた「三国志の復習」ではなく、「新しい三国志」に出会ってしまったという感じであるが、よい出会いなのでそのままハマる。とほー。

 一巻見せ場集。一応、『三国志』についてなんの知識もない人にとってはモロにネタバレとなる内容なので、これから読む予定のある人は以下はご覧にならない方が。ただ「おもしろい、おすすめ!」とだけ書いておくので、ここでこの文書は閉じてくだされ。






●劉備・関羽・張飛の出会いと馬泥棒退治
この三人が義兄弟になるわけだが、「桃園の誓い」がない。このエピソードにはもともと思い入れがなかったので、しばらく気がつかなかったのだが、感想を書こうとして気がついた。あらあら、ふつうにお家のなかで義兄弟の盃をかわしてますこの人たち。でもアツいぜ。

●黄巾の乱:曹操、孫堅らの見た劉備
という感じかなあ。寡兵、しかも貧弱な装備で転戦しながらここまでやって来た、ふてぶてしいほど落ち着いた男というようなイメージで。

●劉備、督郵を打擲して官位を返上する
 これは知られたエピソード。ただ、張飛のキャラ立てが、酔って暴れるだけの手のつけられない者ではなく、「自分が暴れなければ」「そういう役をするのは自分だ」という風に位置づけられているあたりが特殊。今まで「阿呆か」としか思えなかった張飛が、実にいいキャラクターになっている。

●曹操、仏教信徒の忍びを手に入れる
 仏教を認めてくれればそれでいい、という条件で、隠密行動をする部隊をゲット。宗教というものはわからない、とあれこれ考える曹操。キャラに合っていておもしろい。

●幽帝崩御。袁紹と曹操、奔走して幼帝を探す
 帝を戴いた者の勝ちだ、という意識で幼帝を探す曹操。目的意識が明快で、おお、という感じ。しかし、まんまと董卓にしてやられる。曹操は洛陽を逃れる。

●呂布
 張飛もかなりイメージが変更されていたが、呂布! 作者は「すんげぇ強いけどバカ」系のキャラクターに手をくわえるのがうまい。ほれぼれするいい男になっている。変人ではあるが(笑)、変人にそれなりの理由づけがあり、生育歴とからめた語りかたが異様にハマっている。いわゆる『三国志』のイメージでは、美女にうつつを抜かして義父となった董卓を裏切った者と書かれているが、ここでは美女が登場せず、彼が幼くして喪った母への愛情に近いものを注ぐ、家柄も教養もない年上の地味な女性がいるだけで、しかも、義父や養父への情愛が薄い理由の背景に、父親像の欠落をさりげなく提示している。
「俺にとって、父という言葉は、なんの意味ももちません。それすら、あなたはわかろうとしなかった」(p.170)
 う・ま・いー!! おそるべし、北方謙三。

●シ[さんずい+巳]水関の戦い
 孫堅の先鋒、殿を守って祖茂戦死。袁術の兵糧問題。劉備軍、200をもって華雄を討ち取る。馬止めを作って呂布の軍を塞き止める。このへんの戦闘シーン、実に迫力がある。劉備・関羽・張飛が呂布とやりあうシーンはなく、関羽と張飛が退却する公孫サン[王+贊]を助けるため、呂布と対決するシーンがある。

●忠義の旗が泣く
 董卓が洛陽を焼こうとしていることを察し、し水関を睨んでいる孫堅と公孫さん以外の諸候の軍を集めて出陣をとく曹操。しかし聞き入れられず、おのれの軍のみで特攻。むろん、無残に敗退するが、このあたりの展開も「うまいなあ」としか言えない。燃えるんだわこれが。散々に負けて戻ってきても、兵たちのためにも、自分は胸を張っていなければならないと考えるシーンとか。夏候惇が、我々は義の戦をしたのだ、恥じることはないと兵に言い聞かせるところとか。曹操を逃がすために残った曹洪との再会とか。泣ける泣ける。

●伝国の玉璽と孫堅
 玉璽を持って孫堅帰る。途中、劉表を苦もなく蹴散らし、天下を睨む。

●袁紹 VS 公孫サン。趙雲初登場
 待ってましたー(泣)。いや、泣かなくてもいいか。なんとなく贔屓にしている武将ナンバー・ワンであるところの趙雲子竜、無謀に突撃して袁紹軍にやられそうになっている公孫サンを、袁紹配下の勇将・文醜の手勢から、ただ一騎で守っているところ、不意にあらわれた劉備たちに救われる。
 すっかり劉備に心酔した趙雲、家来にしてくれと頼み、劉備もその気がないではないが、張飛がスネて暴れた(←無意識に)ので、目が覚める。趙雲はたしかに強いが、関羽や張飛が劉備とともにしてきたような苦労がたりないと言い、陣を払うときに、一年流浪して見聞を深め、そのうえでまだ劉備の将となりたいなら戻ってこいと置き去りにする。
 趙雲かわいそう(涙)。まあでも劉備の采配は間違っていないような。

●王允
 いわゆる『三国志』では美女貂蝉を使って呂布と董卓に離間の計を仕掛ける文官。しかしここでは、呂布が惚れぬいている妻をかろんじるような行為を、董卓が迂闊にしでかしたことに眼をつけて、やんわりと、じんわりと、ふたりの隙間を広げていこうと画策する。

●孫堅の死
 息子・孫策の初陣、勝利を飾って帰還しようというときに敵の矢にあたって死亡。孫家の人たちって運がないというか……。出陣前に、訪ねてきた周瑜と会っている。ここで周瑜が輜重の少なさから船を使うのだろうと推測したり、戦の意義について語ったりして孫堅を感心させ、贈り物までもらっている。序盤で姿を消してしまう孫堅の影を後までひっぱるのにこれが生きていて、これまた、うまいなあ……としか。
 そういうわけですっかりハマりまくり。でも「記憶と違うー!」モードも同時に起動してしまって、いやはや、どうすればよいものか。

読了:2001.11.01 | 公開:2001.11.23 | 修正:2001.12.24


前に読んだ本次に読んだ本
back to: site top | read 2001 | shop | search
... about site | about me | talk with ...
Amazon.co.jp でサーチ◆ 対象: キーワード: