what i read: 赤目のジャック


*Cover* 書名赤目のジャック
著者佐藤賢一 K. Sato
発行所集英社(集英社文庫)
発行日2001.05.25(マガジンハウス/1998.03『赤目 ジャックリーの乱』)
ISBN4087473201

 雑誌『鳩よ!』1997年5月号〜1998年1月号で連載された『赤目』の単行本化。の、文庫化。中世フランスにおける農民一揆、「ジャックリーの乱」を題材にとった歴史小説。というより、人間の本性小説。
 いつしか村外れに住みついていた僧侶、邪視の能力があると言われるジャックを連れて、フレデリは足を急がせていた。ジャックならば、なにかいい智慧があるかもしれない、助言をしてくれるかもしれないと思ったのだ。集会をもっていたのは村の男たち――わずかに生き延びた人々だった。
 大規模な戦争が終わったとたん、一斉に解雇された傭兵たち。かれらはたちまち盗賊と化し、村を襲った。フレデリの村も襲われた。女たちは犯され、立ち向かうものは殺され、食べ物は奪われ、建物は焼かれ――。
 途方に暮れた男たち、諦めるしかないのかと頭を垂れ、うなだれていたかれらに、ジャックは告げた。
「悪いのは、領主だ」
 民を守るために戦わねばならない領主はなにをしていたか。自分の城のなかで安閑と過ごしていただけではないか。我々はなんのために年貢を払っているのだ。守ってくれぬ領主なら、敬う必要はない。かれらもただの人だ。しかも、村人たちを守らなかったという罪を負うた者たちだ。
 罰さねば、ならない。
 村人たちは蜂起し、ここに中世フランスの歴史に残る農民一揆、「ジャックリーの乱」がはじまった。
 というわけで、冒頭に書いたように、人間の暗部を洪水のようにえぐり出して書きつらねた感のある、歴史スペクタクル。
 戦略がどうのというレベルではなく、ただ欲望のままに突き進む農民軍、激しく抑圧されていたものが解き放たれたときの反動の凄まじさを描いた物語。
 以前、『傭兵ピエール』(*1)の感想のときも書いたが、超常現象なしの『ベルセルク』(*2)と思ってもらえれば話が早い。ただし、今回は主役が農民たちなので、グリフィス(*3)もガッツ(*4)もいない。
 今作は、『傭兵ピエール』よりも濡れ場(しかも変態)と残虐描写が多いので、駄目な人は駄目だろうと思われる。

 怒濤の勢いで読まされてしまったが、主人公であるフレデリの性格の変転が、ちょっと強引かなあ、とは思う。
 ひとりだけ、ジャックに自我を差し出さない青年として描かれていたものが、彼の腹心の部下へ――というところまではともかく、そのあとまたああなって、こうなって。振り幅が広すぎるし、急すぎて、ついて行くのに苦労した。視点人物に感情移入して読んでいたので、ついて行けないと、とたんに物語の世界からはじき出された気分になってしまうのである。

 道化のジェロームがかっこよかったなあ。すごい美青年、だけど○○。登場人物のなかで、もっとも「いい人」なのでは。

 ちなみに、本編とはまったく関係ないが、「ジャックリーの乱」ってどうも覚えがあると思ったら、高校のとき、世界史のテストで出たのである。筆記問題。
第二十問
「ジャックリーの乱に参加した農民の気もちになって自由に書きなさい」
 ……こんな問題を出す教師も教師だが、嬉々として気合いを入れて書いた自分も自分である。でもまさか、それを授業で朗読されるとは思わなかったんだよぅ。先生、ひどいや(泣)。目の前で書いたものを朗読されるのがどれほど恥ずかしいかは筆舌に尽くしがたいところである。今でも嫌だが、当時はもっと嫌だったのである。
 生涯でも指折りの「はずかしい体験」と濃密に結びついているキーワードが「ジャックリーの乱」なのであった。

*1『傭兵ピエール()』
『赤目のジャック』と同じ著者による小説。ジャンヌ・ダルクと彼女と数奇な運命で結びついた傭兵隊の隊長の純愛をからめた歴史ロマン。かなりの読みごたえ。ただし、暴力・残酷描写が苦手なかたにはお勧めしない。
 →感想
*2『ベルセルク』
 三浦健太郎氏による長編漫画。西欧中世風の世界を、超人的な黒い剣士が怪異を倒して歩く――彼の目的はなんなのか。覇王の卵、ベヘリットとは。アニメ化もされ、今も連載がつづく大ヒット作。わたしも好きでぜんぶ読んでいるが、長くなってきたので、さすがに最近あちこちうろ覚えに。いつ終わるのかなあ……。
 ◆コミックス『ベルセルク』◆
*3 グリフィス
『ベルセルク』の登場人物。衆目を集める麗人ながら、戦術戦略陰謀に長け、剣技も一流の万能の青年。傭兵隊「鷹の団」隊長。
*4 ガッツ
『ベルセルク』の主人公となる黒い剣士。剣というにはあまりに大雑把、と表現される長大な剣を背負い、人ならざる者どもとの死闘をくり返す。かつてはグリフィスとともに「鷹の団」で戦った。「鷹の団」では切り込み隊長をつとめていた。

 要するに、剣戟シーンがないということを書きたかったのだろうか>自分

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*2『ベルセルク』
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(途中は省略して現時点での最新刊↓)
21:http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4592137191/usagiyahompo-22
◆画集◆
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4592731387/usagiyahompo-22
◆アニメビデオ『剣風伝奇ベルセルク』◆
1:http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005H296/usagiyahompo-22
(途中を省略して最終巻↓)
13:http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005H29I/usagiyahompo-22
アニメDVD『剣風伝奇ベルセルク』DVD-BOX
 ……なんだか『ベルセルク』紹介ページみたいになってしまったなあ。

読了:2001.08.10 | 公開:2001.09.05 | 修正:2001.12.21


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