what i wrote: [2003/06/06]

*W* 完治 *W*
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[2003/06/06]

 月曜、病院にて採血の結果、肝機能は正常に復したとの診断を受ける。めでたく完治。

 が、中性脂肪が多いので気をつけるように、と言われてしまってほととぎす。なぜほとどきす? とくに意味はない。

 体力の回復につとめるべく、できるだけ毎日、外に出るようにこころがけてみる。

 ウォーキングというほど勢いよくは歩かないが、できるだけすたすたと早足で――そうしてはじめて、意識しないとすたすたとは歩けないことに気がついた。

 懸案の『ハドリアヌス帝の回想』を、病気が治ってゆく過程でようやく読みあげた。老い、病み衰えた皇帝の回想が身に迫って感じられたのは、みずからも身体のだるさ、身の置きどころのなさを感じていたせいもあろう。ちょうどよい状態で読んだ、のである。

 前に二回、べつに面白くないわけでもないのに途中で読むのをやめてしまったのは、今、この本を読むためだったのかも、と考えたりもした。

 本というのは、いつ、どんな気分で読まれるか、わからない。誰に、それが届くのかをコントロールできない。見極めのつかない対象に向けて『物語』をはなつことへの漠然とした不安が、いつも、どこかにある。

 そんな気もちを抱きながらも、熱があれば、ただ「発熱した」以外にどう書けるだろうとぼんやり考え、いつもと頭痛の質が違うと感じれば、どう表現するのがしっくりくるか、を想う。

 それこそ病気である。

 ぺたぺたとサンダルで歩きまわりながら、文章を積み上げる日々がつづく。

 どこまでも歩いていけるような、「きっちり足に合った靴」(須賀敦子『ユルスナールの靴』1996, 1998)とまでは望まなくとも、そろそろ靴を新調しようかな、と思う。雨の日も臆せず出かけられるような靴を。

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