今をとじこめて | ||
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[2000/10/07] | ||
『NAGA 蛇神の巫』を書くときに、古くなるものを書こうと思った。 去年、『ほん・まるしぇ』で公開するための電子本を作ろうと、昔書いた現代ものの恋愛小説の原稿をひっぱりだしたところ、ディテールの部分が古くなっていてリファインせざるを得なかった。 ほとんどの作家人生、ここではなく、今でもない、はじめから古びているどこかを舞台にしたものばかり書いてきたせいで、その体験がひどく新鮮だった。 それで、どうせ現代ものを書くなら「今」を書こうと思った。タイムカプセルにしようと。年月日まできちんと入れ、「今」を封じこむつもりで書いた。 ▼ じきにあの物語は、半端に古くなるだろう。携帯電話の技術など日進月歩だ。実際に、三和音など、すでに古くなりはじめている。読んでいて、やりきれない気分になるかもしれない。 けれど、二十年、三十年とたってから読み返してくれる人があれば、きっと、古さが味になるのではないか。そんなことを考えて、設定を作った。 そういうわけなので、できるだけ長期間保存していただけると著者としては嬉しい。いつか、ふと頁を開いてもらったときに、今年を思いだすよすがになれば、さらに嬉しい。 ▼ 本来、著者の意図など無視されて当然だとも思っているので、お好きに読んでいただいて結構至極なのはもちろんである。意図を書く方が反則だよなあ……。ごめんなさい。 |
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