シリーズ(*1)通巻で九冊め。
ひとことで言うと、なんなんだろう。異世界ファンタジーというには神秘性が薄めだし、絢爛豪華な宮廷絵巻になりそうで少し違う。突き落とされても突き落とされてもどん底から這い上がる女の子のサクセス・ストーリー? でもまたどん底。そんな感じ。
※シリーズもののため、あらすじは、既刊のネタバレを含みます※
大海賊トルハーンの船にすっかり馴染んだカリエだったが、故国であるルトヴィア帝国の海軍と交戦中に狙撃され、海に落ちてしまった。
こともあろうにルトヴィア側に助けられたカリエは、バルアンのマヤラータ、そして伝説的な人物である傭兵王ホルセーゼの娘としてルトヴィアに戻る。若き皇帝であり、カリエのかつての秘密を知るドーン、そしてその皇妃となったグラーシカのもとで、幸せな生活を送れる……わけは、なかった。否応なしに、カリエは政争に巻きこまれることになる――
そのほか、意外なあの人の再登場とか。カリエとバルアンってどうなのよ? とか。グラーシカのいろいろな意味での親衛隊とか。
今回はどん底暮らしがあまりなく、ヒロインのカリエにとっては、今までで最大の「至れり尽くせり」期間が到来。しているような気がする。
が、それに甘んじることがないあたりが、ほんもののカリエ。ためらわず、苦しい方へ、キツい方へと突進していくそのバイタリティには、ほんとうに頭が下がる。
世界各地を下層民の立場でまわってきたカリエだからこそ持ち得る視点で、あらためてルトヴィアを眺めることができるわけだが、考えるよりまず動け! というキャラなので、うだうだと思ったことを開陳するシーンはほとんどない。ただ、要所でそういった視点がさっと挿まれる程度である。
エドさま出ないなあ……。このまま、あの国に骨を埋めてしまうおつもりだろうか。
- *1 シリーズ
- 〈流血女神伝〉、既刊すべて読んではいるものの、感想をすべてあげているわけではない……ような気がする。とりあえず、前作にあたるのは『砂の覇王 6』
→感想
そしてこれを書いている時点での最新作で次の巻にあたるのは『砂の覇王 8』
→感想
読了:2002.05.21 | 公開:2002.08.12 | 修正:-