※シリーズもののため、あらすじは、既刊のネタバレを含みます※例によって例のごとく、新しく過酷な環境に投げ入れられても、めげずに立ち直るカリエ。このヒロインが見せる前向きな姿勢が、読者を惹きつける最大の要素だろうと思う。
バルアンとともにルトヴィアに向かうため、船出したカリエ。だが、その船は海賊に襲われ、気がつけば悪名高き大海賊、トルハーンの船にいた。
なんと、トルハーンはバルアン王子と旧来の知己であるらしい。その上、トルハーンの船には、謎めいたザカール人の美女、ことあるごとにカリエを助けてくれ、かつてはバルアン王子をその色香で完全に惑わした人物でもある、ラクリゼが乗り組んでいた。
トルハーンの船にすっかり馴染んでいるバルアン王子とともに、海賊修行をはじめたカリエ。
だがその頃、彼女の故国であるルトヴィアでは、皇后グラーシカの名を冠した最新鋭艦を先頭に、海賊トルハーンを討伐するための艦隊が出港の準備をとのえていた――。
「パージエさま、わたしは、とっても悪い子供なのだそうですね。そんなこと思ってもみなかったので、母にそう言われたときは、とても悲しかった。わたしはただ、父や母にいい子だと言われたくて、がんばってきたつもりだったんですけど、どこかで間違ってしまったみたいなんです。だから、もうここにいることは、できません」(p.136)この聡く孤独な子どもが、誰かに褒められるためではなく、自分が自分を好きでいられるための生きかたを、移り住んだ場所でみつけてくれることを、切に希う。
読了:2002.02.04 | 公開:2002.08.12 | 修正:-