……どこかで見たことのある絵だなあ。しげしげとカバーを見る。イラストレーター氏のお名前には覚えがないのだが、でもぜったい見たことある絵柄だ。……と思ってウェブで検索をかけたら、やはり、見に行ったことがあるサイトの絵師さんだった。
ちなみに、わたしは一時期毎晩「TINAMI」の更新サイト一覧をチェックして、バナー絵で見当をつけ、これはと思ったサイトを片っ端から覗きに行っていたので、「あれ、この絵は……」と思い当たることはけっこう頻繁にある。
とくに電撃系が多いかなあ。ブギーポップとかキノの旅とかブライトライツ・ホーリーランドとか。今日も本屋で某カバー・イラストになんとなくひっかかりを感じ、よく見てみたら、笹井さんだった……。いいなー。いいなー、ってわたしもイラストで不満を感じたことはほとんどないですが。わりと恵まれてると思う。
それはともかく、物語。
僕――真山和志は平凡な高校生、のはずだった。やる気なんかなくても過ぎていく日常。それに旋風を巻き起こしたのは、九歳の美少女カンナだった。外面の良さは完璧。IQ185以上で五ヶ国語を話す天才児。プラチナ・ブロンドに淡いブルーグレイの眼。天使の姿に悪魔のハート。和志は、カンナの闖入に調子を崩されっぱなしだった。
だが、口で言うほど迷惑なわけでもなかった。カンナは両親を亡くした帰国子女で、祖父母に引き取られて和志の近くにやってきた。ふつうの日本の小学校に通っているが、少女の類いまれな資質と境遇で、小学校に対等な友だちができるだろうか。せめて自分が対等な相手になってやろうと和志は思っていた。
仲がいいのか悪いのか、それまで、ふたりは楽しくやっていたのだ。
駅で和志が出会った美女。薄羽蜻蛉を連想させる彼女が、初対面の彼に向かって微笑み、持っていたバッグを手渡して姿を消すまでは。そのバッグからあらわれたのは、ほんものの機関銃と、通信機らしい代物だったのだ。そしてその通信機から聞こえたやりとりが、ふたりを二度と戻れない道へと導いた。
《地蟲の陽性反応を確認した……駆除に移れ》
えー。かなり読ませる一作。ただし、長いシリーズの第一巻という感じが強く、謎はふりまかれたまま。解決されないものがほとんど。つづくかどうかは、売れ行き次第なのだろうなあ……。
懺悔そのいち。天使の顔に悪魔の心、完璧なソトヅラの良さに比して主人公にだけ無茶苦茶な扱い、天才帰国子女。ここまでで、「これは、ア……ア……」と出かかっていたのが、29ページの「なにいってんのよ、馬鹿カズシ!」でついに「スカ」まで行ってしまった。
……あーもー、なにを見ても聞いてもエヴァンゲリオンに結びつけるのはやめろ>自分
でも思っちゃいましたすみません。
懺悔そのに。こういうこまかいことを気にするのは無粋なのだと思うが、どうしてもどうしても気になってしまう。日本人(黄色人種)と白色人種のあいだのハーフで銀髪青眼は無理でせう。これも伏線? 伏線にしてもどっかで「そんなはずはない」と一回だれかに疑問視させてほしいので、次巻に期待。
と、いきなり文句からはじまっているが、いやー。わがまま美少女のカンナはむっちゃくちゃカワイイし(殊に、二回めの遊園地。眼を瞑りっぱなしのカンナのその理由づけが最高にイカス!)、和志のやる気のなさっぷりと、やる気を起こしたときの男っぷりの良さもいい感じだし、手にとったら最後までつーっと一気に読んでしまった。
話の展開のシビアさもあいまって、かなりこう、ほかと違う一冊という感じがただよう。これでなければ読めない、これでなければ感じられないなにか、を確実に内包しているというか。
ただ、はじめに書いたように、シリーズものの端緒として、謎をちりばめただけの状態なので、これからの種明かしで、作者のセンスが問われることになるだろう。
キャラとして好きだったのは、学園二大美女のひとり、涼子かなあ。気風がよいというか、サバサバしていてつきあいやすそう。こういう友人が欲しいと思えるような女子キャラである。
- 『BLOOD LINK 赤い誓約』
- 続編。陰惨な事件の渦中の人となってしまった和志。彼の心に残った傷は深かった――
→感想
読了:2001.07.11 | 公開:2001.07.27 | 修正:2002.01.12