不死鳥の飛ぶ空 | ||
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[2000/09/29] | ||
道を歩いていると、向こうから中学生くらいの男の子が四人、横並びで歩いてきた。自動車がきたら軽自動車でも二人、大型車なら間違いなく全員轢かれる位置取りだ。 しかも、四人とも前を見ていない。進行方向を向いてはいるのだが、視線が上方を泳いでいる。真上ではない。かれらの前方の高みに、なにかが見えるらしい。 「ほら、フェニックスだろ、あれ」 ひとりが手にしていた傘をふり上げてさした。 「目もついてるな。あのへんが、ほら。ほんとだ、フェニックスだ」 雲の話をしているのだと気がついた。四人は口々に、フェニックスだフェニックスだと言いたてながら前を見ないで歩きつづけ、わたしとすれ違った。 ▼ 完全にすれ違ってから、背後の空をふり仰いでみた。 たしかに雲はあった。左向きの生き物の頭部のようなかたちが、わたしの目には、不死鳥というより龍のように見えた。細長い胴が蛇行しながら、風に流されるように右へのびているのを、かれらは翼の輪郭と見たのだろうか。 そもそもかれらのフェニックスはいったいどんな形をしているのか。きっと、ゲームやアニメに登場するそれ、全員に共通する明瞭なイメージが、そこにはあったはずだ。 すぐにふり返っても、かれらと同じものを見ることはかなわなかったに違いないと考えながら、その場を立ち去った。 |
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