かつて天界で神々は争い、すべての母たる女神を地中に封じこめた。その故事はいつか古びて遠ざかり、慈しみ深き女神を祀り、運命の織り物を織って暮らす巫女たちが住む神殿だけが残った。
その神殿もまた、往時の勢力は失われ、斜陽を迎えていた。三人の若い巫女は、神殿を束ねる大巫女から滅亡の預言を聞かされた。小さくておとなしいトゥラ、才能にあふれたエウテシュ、恋人を追い、女としての幸せを求めたハライ。それぞれに未来と向き合った彼女らは、しかし、どうしようもなく長虫が起こす変革に巻きこまれていく。
預言は成就し、神殿は長虫によって完全に崩壊した。
滅びた神殿を守る最後のひとりとなった巫女は、長虫を追っておとずれたふしぎな少年と出会うことになった。世界のことわりの外側を生きる者、人でもなく神でもなく名すらもたず彷徨する、妖魔使いと。
妖魔とは、女神の恩寵の外にあるもの。そして妖魔使いとは、その妖魔の名を明かして契約し、おのれの下僕とする強大な術をよくする者。神殿に姿をあらわした少年は、長虫を追っているのだと告げた。
巫女にとっては違う世界の住人に等しかったが、今の彼女には彼の助力が必要だった。なんとしても長虫を止めねばならない。神殿ばかりではない、このままでは世界が滅びてしまう。
つかのま、利害の一致をみた巫女と妖魔使いは、長虫を追って世界の果てを目指した——。