CHANGELING - a funeral of WHITE

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「あなたは力が欲しくないの?」
 マァハは美しい少女だった。モルガヌとともに暮らしているせいで、成長が少し遅い。はじめは年上に見えたが、今は同じくらい。じき、彼は少女を追い越すだろう。
 今ですら、もう彼女の金色の頭を見下ろしてしまう。
「お前は欲しいのか」
「もちろんよ。当たり前じゃないの。わたしは〈女神〉の血を引いているの。いすれ〈女王〉を追い落として、わたしだけの国を作ってみせるわ」
 あっさり言い切って、マァハは彼をみつめた。
「そうか」
 なんとなく、胸が痛んだ。
 少女の夢が破れるであろうことを、彼は知っていた。氏族に刻まれた血の記憶だ。〈女神〉はあまりにも強い。
 だからだろう、マァハを哀れに感ずるのは。礼を失したことと知っていても、少女を哀れむ気もちを拭い去れはしない。
「約束して」
 黄金の眸は、太陽そのもののように明るかった。
 マァハはつねに確信に満ちていた。せめて自分だけでも心の底から信じねば、望みを語ることすらあやういのだと、無意識に悟っていたのだろう。当人にそれを告げても、けっして認めることはないだろうが。
「約束して、リン。困ったことがあれば、なにを措いても駆けつけて、助けてくれると誓って。わたしも誓うわ、あなたが困ったら、かならず助けてあげる」
「誓いなどしなくても、お前が望むなら、助ける」
「わかってないのね、リン」
 視線をはずさないまま、マァハはささやいた。彼女の吐息は、林檎の花の匂いがした。
「……あなたの力をわたしにちょうだい、と言っているの」
「だから、必要なら——」
「必要になるわ」
 彼は当惑した。なぜ、と思ったが、直接は問えなかった。
「だが、お前にはモルガヌがいるだろう」
「そうよ。でも、あなたも必要なの。そしてあなたにも、わたしが必要だわ。力を求める理由なら、わたしにあるわ。いくらでも、ある」
 わたしのために、と少女は熱をこめて言った。わたしのために、強くなって。