流血女神伝、シリーズ第六巻。えっ、もう六冊か。そろそろ、今から追いかけるのは大変かもしれない。
酔狂としか思えない王子バルアンのおかげで、一命をとりとめたカリエ。
そのバルアンは、ドミトリアス王子の戴冠式ならびにグラーシカ王女との結婚式に列席するため、ルトヴィアへ行くという。カリエは小姓として随行を命じられた。
懐かしい人々の名を聞き、名のりあうことはできなくとも再会できる、少なくとも一方的に見ることはできると喜ぶカリエだったが、権謀術数渦巻くカデーレ宮に、波乱の気配がたちこめていた――。
自分で書いてて「なんだかなー」なアオリ文句みたいな内容紹介だが、このシリーズ、毎回ジェットコースター小説なので、主人公はどん底→意地っ張り→苦労→サクセス(といっても完璧ではない)→運命の意地悪→どん底(以下ループ)という流れでのぼったりくだったりをくり返す。
で、その「のぼったりくだったり」の波乱万丈さが楽しみの核――つまり、あらすじこそが面白さのコアなのだ。たぶん。
そりゃキャラクターがいいとか文章が安定してるとか異文化をうまく扱っているとか、いろいろとこまかい「おもしろさ」の積み重ねはあるのだが、なによりやっぱり、ストーリーがいい。
「果たして××の運命やいかに!」と書きたくなるような話。そこがすごくいい。連続活劇というか、弁士がいて話を盛り上げて「つづくッ!」といくような、そういうノリ。とにかく盛り上がり、盛り上がり、盛り上がる。
だからストーリーにはとくにふれないことにして、えー。キャラクター。わたしの贔屓のエディアルドさんの出番(というか見せ場)がたいそう少ないので、個人的には寂しい。
まあ、心の平穏は得ておいでのようなので、よろしいでしょう……と思ったらラストでまた! ああもうなんでこう「果たして××の運命やいかに!」って話なのかー!(身悶え)
そういうわけで、続刊が早く読みたいところだが、次は11月くらいの予定らしい。とほー。このまま待つのかー。がんばれわたしの記憶力。
シリーズ未読のかたは、『帝国の娘』前後編(
*1)からどうぞ。強気の女の子がひたすら頑張りまくる、猛烈なお話。前向きになれる逸品。
- *1『帝国の娘 前編/後編』
- なんの変哲もない田舎娘だったはずのカリエは、不意にあらわれた青年にさらわれた。なんと、王子アルゼウスの身代わりとして、王位継承に名告りをあげろというのだ! たしかにカリエの容貌は、病弱なアルゼウスのそれとうりふたつだったが、中身は大違い。王子付きの武官であるエディアルドにビシビシしごかれることになるが――。シンデレラ・ストーリーなどと説明したら間違っているような気がするが、ある意味ではそんな感じ。
→感想:前編/後編
読了:2001.02.03 | 公開:2001.02.21 | 修正:2002.01.06