what i read: ケルトの白馬


*Cover* 書名ケルトの白馬
"SUN HORESE, MOON HORSE"
著者ローズマリー・サトクリフ Rosemary Sutcliff
灰島かり:訳)
発行所ほるぷ出版
発行日2000.12.25(1977 The Bodley Head, London)
ISBN4593533775

 結局、ネット通販で手に入れた『ケルトの白馬』。ぜったいに買うと心を決めてある本はネット通販であっても問題が起きる可能性はほとんどない。
 しかし購入前にページ数やサイズをろくに確認しないので、小さなうすい本でおどろく。
 イギリスに今も残る白亜の馬――チョーク層を露出させることで大地に浮き上がった抽象的な白馬の絵は、その背後にどんな物語をもつのか。
 サトクリフは、青銅器時代にその地を支配したイケニ族の少年に焦点をあてる。
 彼の名前はルブリン。侵略者であるイケニ族が、浅黒い肌の先住民族を蹂躙したことの証として、一族に稀にあらわれる、黒い子ども。族長の息子であっても、それゆえに、彼に日が当たることはなかった。
 彼は、ものごとの形をとらえることに心を奪われていた。
 燕が空をひるがえる一瞬の影を写しとろうとしたところからはじまり、彼の心に刻まれたのは、稲妻に照らしだされた白馬の姿だった。
 幼い日に見た、永遠の図像。馬は彼の部族の象徴であり、女神エポナをあらわす動物だった。
 ルブリンと彼の親友ダラは、かつて部族がそうしたように、馬と仲間をひき連れてこの地を旅立ちたいという夢を無言のうちに共有していた。
 だが、大陸から強いケルト人たちが海を渡ってやってきたという不穏な噂が流れはじめていた――。
 これは傑作。文句のつけどころなし。
 古代の風をじかに感じたい人はぜひとも読むべし。『太陽の戦士』もかなりよかったけど、『ケルトの白馬』と比べるとこっちに軍配が上がるかなあ。
 ものを創ることにとり憑かれることがある人には、とくに強力にプッシュ。
 現代人とはことなる感性で心から神を信じ、それが当たり前の世界に生きている人々の姿を描いているのだが、創作とはそもそも神に捧げられるべきものだったのだという、「あるべきかたち」がここにはある。
 個人的に、「あ、いいな」と思ったポイントは、主人公が炭でらくがきしているのに気づいた、部族の詩人と青銅鍛冶屋が、自分たちの仲間がここにいると無言で目くばせしあうシーンとか。
 これは「ほのぼのいいな」で、もっと痛切に、心に切りつけるように印象に残るシーンはほかにもある。
 たとえば、上のあらすじにも書いた、動く燕の姿をとらえようとするシーン。
 彼の肌の色を知った母親が泣いたというほんのわずかな描写。
 孤独を噛み締めるシーン(これがまたたくさんあって、胸が痛む)。

 しかし、サトクリフってどうして少年ふたりが異様に強い友情で結ばれてますか。そういうのがツボな人にもオススメ。

 あー、ぼろぼろ泣いてしまいましたよ……。

読了:2001.01.14 | 公開:2001.01.18 | 修正:2001.12.15


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