いただきもの。佐々木さん、ありがとう〜。
えー、自分の仕事でまったくそれどころじゃない状況から逃避するためにウッカリ読みはじめ、そのまま一気に読破してしまった。だって途中でやめられなかったんだもの(言い訳)。
主人公のえりかは十三歳、中学生。きまじめな性格(しかも、自覚は薄いが美形なのだ)ゆえに周囲から浮き上がり、屈託のない性格の由加だけが親しい友人。その由加がみつけてきたのが、鬼の博物館だった。なにげなく訪れたその場所で、ふたりは鬼石町の地名の由来を知る。昔、ここには鬼がいたのだ。
そしてその鬼は、目覚めようとしていた。まさにえりかの身近で――。
とまあ、そんな感じ。かなりコワいシーンがいくつか。
やっぱり、いちばんコワいのは「お裁縫さん」(←勝手に名づけただけ。佐々木さん、すみません)だよなあ。「お裁縫さん」コワいっす! イッちゃってるしー! イッちゃった自分を正当化してるしー! しかもお裁縫ー! そのうえ結石マニア!(そうか?)
いや「お裁縫さん」について語ると長くなりそうなのでそれは横においておくとして。
主人公であるえりかのキャラクターがとても丁寧に描かれている。読んでいてどんどん入りこんでしまった。
繊細で内向的、そんな自分に不甲斐なさを感じ、外向的な由加に憧れるえりか。そこにもってきて事故。しかも家庭崩壊。そのうえ超常能力発現。これ以上書くとネタバレ。
よく頑張ったねえ、と肩を抱いてあげたくなる。
ホラーというより、思春期の心の揺れを描いた小説として読んでしまったかもしれない。とにかく心情描写がこまやかなのである。
ただ、えりかに入りこめるぶん、えりかの視野の外――たとえば鬼石町の由来と「お裁縫さん」の関連とか――の描写・説明が、ちょっと弱くなっちゃったかなあ、という感は残る。しかたのないことだとは思うが――十三歳で自分の身の回りがあんな感じでは、町名の由来がどうのなんて考えるゆとりはない。当たり前――読み終えて、えりかの中から抜け出てから思い返してみると、ちょっと残念かなという気がしなくもない。
しかし、えりかに入りこんで読めたからこそ、幻視される風景が異様に身に迫るのであり、p.296からの橋のシーンが感動的になるわけで、……難しいなあ、このへんは。
……と書くとなにやら一人称小説のようだが、三人称で、視点もえりかのみではないので。単に、わたしの読みかたが、えりかに異様に偏ってるってだけなのだ。悪しからず。
読了:2000.08.21 | 公開:2000.08.22 | 修正:2001.12.18