あまりにも人間らしく | ||
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[2004/03/18] | ||
もう一回、『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』を観てきたのだった。ゴンドール執政家の描写については措いておくとして――というか、措かないとなにも話せない――やはり、ローハン最高である。 セオデン王が麾下に布陣を指示し、槍を剣で鳴らし、死だ! と叫んで突撃するあのシーンのために、再度映画館へ行ったといっても過言ではない。 ▼ しかし、人間的な映画だったなぁ。 アラゴルンは王位に就くのを避けたがっている=高貴な生まれの義務から逃れたいと念じているようだし、エルロンドは娘を嫁にやりたくない父親根性丸出し、執政は過食症で現実逃避の挙げ句、馬で足蹴に――いや執政の話は措いておくんだった――人の苦悩はよく描かれていたと思うのだが、等身大の悩みを抱えたかれらは、英雄的な偉大さからは遠くなってしまう。 だからこそ、ひろく一般にも受け入れられたのだろうか。逆にだからこそ、今なら「恥じずに」父祖のもとへ行けるとささやくセオデン王が、英雄のきらめきを帯びて見えてしまうのだろうか。神話や伝説の時代に生きた人々と肩を並べるはたらきをしたという自負が、彼にその言葉をいわせたのだから。 ▼ 既に自作追求モードに入っていたせいで、映画を観ているあいだも自作のキャラクターがそのへんをうろついて、関係ない話をしようとしたりするのが、参った。 帰宅する道すがら。陽は、やわらかな琥珀色。曖昧な影を落とす石のかたまりに、少女が座っている――そんな光景が、脳裏に浮かぶ。 「どうしてかな。どうして、素晴らしいものとか、綺麗なものとかって、みんな、なくなっちゃうんだろう。過去のものになっちゃうんだろう」 「ああ、偉大なものは失われて久しい。だが考えてみろ、お前のことが、伝説として語られる日が来るかもしれないのだぞ。今もまた、かがやかしき日なのだ。わたしたちが、あらたな勲をつくるのだ」 いつのまにか、景色は変わっている。行こう、と少年が告げる。でも、どこへ? かれらの行く手はまだ暗く、見通しがきかない。 ▼ いつになったら、先が見えてくるんだか。 |
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