電車が揺れ、その顔が美前の方に傾いた。
えっと思う暇もない。
金髪が頬を撫で、ため息のような声が耳に届いた。
「狙われている」
美前(みさき)は目立たないように生きてきた
なぜなら、彼女には人にない力があったから
それは人ならざるもの、妖精を見る視力
〈セコンド・サイト〉と呼ばれるものだった
妖精が見えるからといって、なんの問題もない。ただ見えるだけ
あれは無意味、無害なものと信じる努力をしてきた
大学を卒業し、就職して、平凡な人生を送るつもりだった
そんな日常の破綻は突然訪れた。狙われていると告げる青年
夢のなかから美前に帰還を呼びかける、竪琴を持った男
そして現実にも、美前を追うものは影響を及ぼしはじめていた――
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"Usagi-ya" Hompo