書名 | ダークホルムの闇の君 "THE DARK LORD OF DERKHOLM" |
---|---|
著者 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ Diana Wynne Jones (浅羽莢子:訳) |
発行所 | 東京創元社(創元推理文庫) |
発行日 | 2002.10.11 |
ISBN | 4-488-57203-0 |
ダークホルムは魔法がまともにはたらくのが常識の世界。そこには神が、魔物が、幻獣たちが存在し、魔法使いや吟遊詩人が専門の大学を出て生計を立てている。魔法の世界へ現実からの観光客が、という設定自体には、あまり目新しい感じを抱かないのはなぜだろう。では作品名を挙げてみよと言われても、とっさには思い浮かばないのだが――〈ランドオーヴァー〉シリーズのように、現実世界の人間が魔法の王国を買ったものなら思いつくが――とにかく、新機軸という感じはしない。
だが、ダークホルムは今、じりじりと破滅の淵に追いやられていた。その元凶は、魔物に守られた契約の履行を迫る、異世界の事業家・チェズニー氏と、彼の巡礼団である。ダークホルムに観光にやってくる巡礼団のために、住民たちは「闇の君」との戦いを演出せねばならない。見せかけの戦いに辟易し、そして実際に傷つき、疲れ果てたかれらは、ついに神頼みに出た。
そしてふたつの神殿で出た神託のひとつは、かつて魔法大学を混乱に陥れた魔法使いのダークを「闇の君」にすべし、そしていまひとつは、ダークの息子で豊かな才能の持ち主らしく思われる――しかしまだ若い――ブレイドを、巡礼団を先導する魔法使いにすべし、と出たのだった。
ブレイドの大学進学をめぐっての親子喧嘩の真っ最中だったダークとブレイドは、突然突きつけられた使命におどろき、怒り、理不尽さに不満を表明しながらも、なんとかそれを受け入れ、家族で力をあわせて立ち向かうべく頑張りはじめた。
ダークの妻であり、やはり練達の魔法使いであるマーラ、ふたりの娘で詩人見習いのショーナ。そして、ダークの専門である生物を扱う魔法の力と、夫婦の細胞から生まれた五頭のグリフィンの息子と娘。
総勢九人が大車輪で働いて、なんとかチェズニー氏の「巡礼団」を迎える準備がととのいはじめたかに思われたとき、永い眠りから目覚めた竜が、ダークのもとを訪れた。なんと、闇の君に仕えたいというのだ。
これはすべて茶番劇なのだと説明したダークに、年老いた竜の怒りが爆発した。魔法の防壁をものともせず、竜の炎がダークを襲ったのだ――。
読了:2002.08.22 | 公開:2002.09.21 | 修正:-