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2002/01/25 (金)
●訃報:いぬいとみこ氏
やあ。ダンディ戦隊の静かな顔、哀しみの後ろ姿、むせび泣くベース奏者、寂しい雰囲気満載のブルーだ。久しぶりだな、お嬢ちゃんたち。
いぬいとみこ、という名前をご存じだろうか。図書館の児童書の棚を眺めてみるといい。運がよければみつかるはずだ。子どものころに一冊か二冊、読んだことがあるお嬢ちゃんもいるんじゃないか?
そのいぬいとみこ氏が、16日に亡くなられた。葬儀は26日だそうだ。
もちろんオレは、いぬいとみこ氏ご本人を知っている、というわけじゃない。だから、いぬい氏が書いた本の話をしよう。
『木かげの家の小人たち』って本がある。児童文学だ。舞台は戦時中の日本。なんか暗そう、って思うかい? ……いいんだ、オレの趣味だからな。だいたい明るい気分のとき本なんか読むか? 読むヤツもいるだろうが、オレは暗い気分のとき、どろどろと暗い方に浸っていくのは大好きだ。
話が逸れたが、とにかく、戦時中だ。だから、食べ物が自由に手に入らない。そんな状況なんだが、ある女の子が、小人たちを養ってるんだ。毎日、コップにミルクを入れて置いておかなきゃいけない。そのミルクが小人たちを生かしてくれるんだ。
でも、女の子だってミルクは飲みたい。ひもじいんだ。そもそもミルクが手に入るっていうのだって、すごいことなんだ。ようやく手に入ったミルクを、小人のためにとっておかなきゃいけない。
海外の児童文学をよく読むヤツなら、この英国から渡ってきたらしい小人は、おそらくメアリー・ノートンの書いた古典的な作品、『床下の小人たち』に登場するのと同じ種類だと、見当がつくだろう。人間と同じところに住んでいて、人間のものを「借りて」暮らしている。だから、「借り暮らし」と自称する小人たち。家のなかでちょっとしたものがなくなったと思ったら、「借り暮らし」たちが「借り」るために持って行ってしまったんだ。……って、そういう話さ。
その小人が日本に移住してきたら、というのが『木かげの家の小人たち』なのさ。時代背景が物語に暗い翳を落としているが、その雰囲気がこう、たまらなくイイんだなあ……。
今夜は、青い硝子のコップにミルクを注いで、窓辺にでも置いてみるかな。ロマンティックな小人さんでも、お嬢ちゃんでもかまわないゼ。みつけたら、飲んでいいさ。オレの奢りだ。
いぬい氏のご冥福を祈って。盃を捧げよう、すべての不可視の存在に。
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